Melko

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオスのMelkoのレビュー・感想・評価

3.8
アディオス、偉大なソンプレーヤーたち。

ああ愛しい。
アディオスを見たからまた前作が見たくなる。
前作は唐突なライブ映像から始まり、プレーヤーそれぞれの語りも少しあっさりめだったので、ゆっくりじっくり一人ずつのルーツや人生を掘り下げてくれた今作を見たことで、一人一人への理解や、キューバという国への改めての理解が深まった。
虐殺、奴隷、差別、貧しさ…とても複雑で苦しみに溢れた国。その悲しさややるせなさを紛らわせるために、わざと陽気なメロディに乗せて切ない歌詞を歌い上げているのなら、やはりこの国にしか作れない音楽だ。
このアディオスを見たからこそ、前作のライブに至るまでの苦労、プレーヤー達のぶつかり合いを経ての、アムスでのライブ1曲目が始まった時のカタルシスが倍増する。ああもっかい見よう。

推しのエリアデス・オチョアの2016年現在の登場シーンがめちゃカッコよくて、、
タバコつけながら出てくるのは反則…

「誰にでも、人生の花は必ず咲く。ただ、それは一度きり。だから莟がつくのを見逃さないこと」
「喜びごとに遅きことなし」
「音楽の精霊が自分と共にある。精霊は、旅立ったわたしの友人達だ」
旅立ったプレーヤー達の金言に溢れている。

体の底から音楽が湧いてくる。
音がなくても歌が溢れてくる。

目立って歌えない不遇の時代を共に生き、悔しさに泣き、諦めかけた時、必ずそばにいてお互いを見てきたプレーヤー達。
だからこそ、旅立った仲間の分まで、歌い継ぐ。みんなで作った音楽、作り上げた舞台を残していく。若い世代や孫を巻き込んで。
それは国境を越える。
ホワイトハウスの門を開く。

苦しみを歌に変え、持てる力を手先に込め、必要とされるなら、死の間際まで、力の限り、命の限り奏で歌う。
神様から与えられた舞台だから。

仕事人の最高の生き様を見せて頂いた。

腐ってたらいけないな。

18年経ち、貧しかったキューバも随分と変わった。誰でもスマホやノートパソコンを持てるようになった。
息づく音楽は変わらないでいて欲しい。

「キューバは小さな国だ。僕たちには資源も何もない。でも僕たちの国は、音楽を生み出した。」
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