こたつむり

ロブスターのこたつむりのレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
3.4
高層ビルから落下傘を付けて飛び降りるが如く。現実と虚構の間を浮遊する感覚。
それを楽しむことが出来るのか、それとも違和感を抱くのか。その結果によって評価が大きく分かれる…とてもふわっとした作品でした。

ちなみに僕は後者でしたね。
本作のようなS(少し)F(不思議な)作品は、“如何にして観客を独特の世界観に引き込むか”がキモだと思うんですが、その導入部で引っ掛かってしまったんですね。

いや、世界観と言うか、ルール的なものは過不足なく表現できていると思いますよ。『独り身だと人間以外の動物にされる』という骨格を元に枝葉を上手に盛り立てていて、その手際は良かったと言えるんじゃないでしょうか。でも、肝要なのは『何故、独り身ではダメなのか』という部分。これが最大の疑問点であり、本作のテーマだと思ったんですが…。

いや、劇中で全てを説明する必要はないと思います。ほんの少しだけでも片鱗を見せれば良いのです。「あ。だからこういう世界なのか」って頷くことが出来れば良いのです。でも…それを感じることが最後まで出来ませんでした(とか偉そうに書いていますが、強度な近視と乱視の所為で見落としている可能性もありますので、そのときはコッソリと教えてもらえると助かります)。

いや、でもですね。
作品としては丁寧に作られているんですね。
主人公やヒロイン、施設で出会う人たちや反体制派のリーダーなど、主要人物たちのキャラクタの個性は際立っていますし、緩やかなテンポながらも予断を許さない脚本は絶妙でありましょう。また、本作の骨格である“設定”も唯一無二ですし、そのシュールさは一見の価値があると思います。

いや、だからこそ。
上手に物語に呑み込んでもらえなかったのが。
悔しいのです。

というわけで。
僕のように理屈先行型の頭カチコチなタイプには向かない作品だと思いますが、根底に流れる哀しさは普遍的なものです。硬化しきった脳みそを解すように挑戦してみるのも乙かもしれません。

余談ですが、僕が動物にされるならば“ネコ”一択ですね。というか、今からでも積極果敢にネコになりたいくらいです。但し、可愛がってくれる女子が必須オプションですけどね。って贅沢な話でした。
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