円柱野郎

ちはやふる 上の句の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

ちはやふる 上の句(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

末次由紀の同名漫画の実写化作品。
競技かるたに青春をかける高校生たちの姿を描く前後編二部作の前編。

原作もアニメも楽しんだ身としては、実写化の報に「また実写で原作をぶち壊すのか」という想いと、「題材的には実写化向きかもね」という相反した思いがない交ぜに。
そんな感じで期待半分でこの映画を観たのだけど、いや…なめてしまっていて申し訳ありませんでした。

紛うことなき「ちはやふる」。
原作の要素である“青春”“努力”“友情”“勝利”そして“歌”が、丁寧な再構成によって2時間に折りたたまれてるじゃないですか!
少し背が低めかもしれないけど、広瀬すずが演じる主人公の千早はイメージ通り。
太一(野村周平)もかなちゃん(上白石萌音)もキャラクター性は原作そのまま。
肉まんくん(矢本悠馬)はコメディリリーフになっていたけど、マンガ的なノリのつなぎ役として良い間を演じてたな。
机くん(森永悠希)はイメージがリアル寄りになったので、最初はヤな感じだったけど後半にドラマの一つの頂点を持ってくる。
これが良いんだよね、不覚にも感動してしまったw

「ちはやふる」は千早・太一・新(真剣佑)の三角関係の話(3人の距離感がとても好き)であるとともに、瑞沢高校かるた部というチームの話でもある。
ストーリーにおいてこのバランス感覚が絶妙だし、ちょっとしたギャグ的な演出も実写で無理のない範囲にマンガ的な感じが良い。
場面場面で話を進ませる要素にもちゃんと百人一首の歌が意味をもって存在しているところなど、監督が原作の魅力が何かをちゃんと理解しているからこそだと感じられて何か嬉しい。
原作からオミットされた要素ももちろんたくさんある。
でもそれは尺の加減で仕方がないし、だからこその再構築。
小学校編は殆ど省略されてしまったけど、それでも彼らの関係の原点において重要な部分はちゃんと語られているし、不満はないな。

「田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ」
劇中、色んな百人一首の歌が取り上げられるけど、「この景色は千年前から変わらないんだ」という富士山の景色には、百人一首が受け継いできた時間の長さに感動も覚えた。
ストーリーと共に歌の魅力を再発見できる。
「ちはやふる」はそれが素晴らしいし、それは原作でもアニメでもこの映画でも変わらない。
だからこそこの実写化は成功だと思う。
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