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この世界の片隅にのpepejaのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.5
評価が良くて親に勧め、親が早速見て逆に勧められたので鑑賞。

戦時中の名もない一人の女性の日常を描いた、皆さんも仰るように淡々とそしてほのぼのとした暖かな作品。
必要以上に戦争を強く描かず、だからこそ彼らの日常を滅茶苦茶にしたそれに憎悪を抱かざるを得ない。

絵の美しさ、音楽の透明感、主演のんちゃんの演技、どれもとてもこの作品に合っていて素敵。
どこか抜けていてぼーっとしているという主人公すずが失敗した時の「たはーっ」という顔が可愛くて仕方がない。
冒頭、時系列が飛ぶように過ぎ去り、え、今の一体結局何だったんだ?みたいな置いてけぼり感はあったが、ふとした縁から結婚話が舞い込み、あれよあれよと言う間に廣島から呉へとお嫁に行く事になったすずの毎日がとても愛らしい。
優しい義両親、気の強い義姉、可愛い姪っ子、落ち着いていて誠実な夫、ご近所の人たち、新しい生活。
だんだん北條夫妻が可愛くて可愛くて堪らなくなってくる。

主演ののんちゃんは、常のぼーっとした、抜けてるすずのほわほわした演技から、激情を滲ませたり、絶望に咽び泣いたりとその落差が素晴らしく、流石女優さんと感心した。
彼女を取り巻く男性二人は細谷さんと小野さんという超有名人気声優さんなので、アニメを割と見る人間からすると、その二人の間ののんちゃん、という構図に少しむずむずと小っ恥ずかしい気持ちになったものの、流石にお二方ともお上手なので後半はただただ聞き惚れていた。
声優さんの経験もある若手の俳優さん、とかだとどうだったんだろうな、とは思わなくもないが…

徐々に戦況は悪化、歴史を知る私達はあの日へ向かってひた走る彼らの毎日をただスクリーンの前で眺める事になる。
何度も顔を顰め、涙が流れた。
けれど絶望、悲しみから少しの希望へ、そして物語はやはり淡々と終わるのだ。
それがこの作品らしいな、と最後は微笑みながらエンドロールを眺めた。

上映終了後、拍手が沸き起こった。
確かにとても良い作品だった。
ひとつ、クラウドファンディングで出資された方々のクレジットが流れるところ、そこも是非お見逃しなく。
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