T太郎

パッセンジャーのT太郎のレビュー・感想・評価

パッセンジャー(2016年製作の映画)
3.8
1037
18年ぶり5度目の優勝・・違う、4年ぶり3度目の鑑賞。
クリス・プラット、ジェニファー・ローレンス主演のSFドラマだ。

ストーリーはシンプルで分かりやすく、かつ非常に面白い。

物語の舞台はとある宇宙船だ。
新天地である惑星を目指して、長い長い旅を続けている。
船内では乗員258名、乗客5000名が冬眠ポッドで眠っていた。

ある日、その宇宙船が小天体と正面衝突してしまう。
シールドが機能して事なきを得たのだが、一つの小さな小さな故障が発生してしまう。
1機のポッドが開いてしまったのだ。

目覚めたのはジムという男だ。
彼はたちまち大混乱に陥る。
なぜなら、120年間の旅の途中、30年目で起こされてしまったからだ。
90年も早起きしてしまった訳である。

これが何を意味するのか。
余生を船内で生きてゆかなければならない。
一人ぼっちで。
そして、彼だけが新天地の惑星にたどり着けないのだ。

彼はあらゆる手を尽くして事態の打開を試みるが、全て失敗に終わる。
冬眠ポッドを再稼動させる事はかなわなかったのだ。

彼は寂しさと切なさと心強さと・・・違う、寂しさと絶望感で自殺さえ考えるのである。

1年が過ぎた頃、ジムはある冬眠ポッドに目を止める。
オーロラという妙齢の美女が眠るポッドだ。
彼はたちまち恋に落ちるのである。

ジムはここで煩悶懊悩する。
彼女を起こしたい。
無性に起こしたい。
だが、それはあまりにも残酷な仕打ちだ。
許されざる事だ。
許されざる事山の如しなのである。

しかし、彼は寂しくて死んでしまいそうだったのだ。
ウサギより寂しがり屋さんだったのである。

彼はやってしまう。
オーロラを起こしてしまったのだ。

当然、オーロラにそれは明かさない。
素知らぬ顔で彼女に近づくジム。

一体どうなってしまうのか!

さて、長々と書いてきたが、物語はここからだ。
ジムとオーロラの関係性の変化が一つの見どころだが、ジムを演じたクリス・プラットの演技が素晴らしかった。

ジムは平静を装いながらも、内心は罪悪感とビクビク感で一杯なのだ。
オーロラと親しくなればなるほど、バレた時が恐ろしい。

クリスはそんなジムの心情を非常に細やかな表情で表現しているのだ。
すねに傷持つと言うか、負い目があると言うか、そんな人間が見せるであろう表情が実にリアルで良かったのである。

そんな二人の物語を経て、終盤には宇宙船に危機が訪れる。
冒頭の小天体との衝突事故が、実は致命的な障害をもたらしていたのだ。
小さな小さな故障ではなかったのである。

一体どうなってしまうのか!

とまあ、後半にちょい派手なスリラー演出があるが、これは基本的にジムとオーロラの人間ドラマだ。
二人に去来する様々な感情は、観客の共感や納得感を得るのではないだろうか。
ラストシーンも非常にいい。

ローレンス・フィッシュバーン演じるクルーの起床と退場はご都合感を感じないでもないが、まあ些細な事だ。
ちっちゃい事は気にしない方がいいだろう。
人生、ワカチコ精神でいこうではないか。

最後に、普段私はこんな事は絶対に言わないのだが、今回だけは言わせてい欲しい。

ジェニファー、結婚して。

4年後に4度目の鑑賞をお約束して、本日はこれにて閉店ガラガラと致します。
T太郎

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