チョマサ

疑惑のチャンピオンのチョマサのネタバレレビュー・内容・結末

疑惑のチャンピオン(2015年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ランス・アームストロングを指導するフェラーリ先生が、もろにマッドサイエンティストに撮られていて漫画みたいだなとおもったんだけど、他の場面も漫画みたいな撮りかた/強烈な構図の画が多い。カメラを斜めにしたり、スクリーンの真ん中に判事の顔を置いたり、スクリーンの端にランスの顔を映しパンで往復したりとか。酔いそうになる撮りかただけど、ランスが強烈過ぎて気にならない。というか、ランスが悪すぎのでちょっと信じられないくらい。デイビッド・ウォルシュの著書は原案になっているので、脚色はされてるんだろうけど。

ランス・アームストロングのドーピング行為を暴く内容になるが、ツール・ド・フランスにおけるドーピング蔓延や業界が儲けのためにランスの行為を黙認していたことの暴露にもなっている。

ランスがなぜ勝ちに拘るかは、死の穴と呼ばれる場所に行くシーンが象徴している。ランスはまず、ドーピングがはびこるツールの現実を前に勝利が出来ず、レーサーとして死んだ、そして、人間としても癌で死にかけた。ランスが死の穴に見たものは、きっと死にかけたときの体験で、ベッドで朦朧としていたときに見えたものだ。そのために彼はドーピングをしてでも勝ちに拘る。ツールに復帰したがったのも、王者の振る舞いをもういちどしたいと欲が出たのもあるだろうけど、単にレーサーとして、まだ死にたくなかったのもあると思う。ラストで彼が死の穴に落ちるのは、とても分かりやすい死の描写と思う。

ランスが勝ちに拘るようになった理由をしっかり描いてるから、後半になるにつれてデイビッドとランスの争いにうつっても、筋が通っている。

思い返すと、冒頭でデビッドとランスが会う場面が、これからのふたりの関係を暗示してる。取材中にサッカーゲームの筐体で遊んでるんだけど、すでにここから二人は戦う関係になる伏線になってたんだな。

OPのレースシーンはとてもカッコいいのでもっと見たかったんだけど、後半はレースシーンが少なくなるし、レースシーンでも実際の当時の映像が挿まれるだけなのが、ちょっと物足りなかった。『茄子』みたいな映像は実際に撮れるんだな。この映画は当時の映像の挿入も多かったな。

知っている楽曲が多かったのも楽しめた。ラモーンズの電撃バップや、BRMCのSpred Your Love、RadioheadのNo Surprisesとか。EDは「Everybody knows Everybody knows」って繰り返すのが印象的で、誰が歌ってるかと思ったら、このあいだ亡くなったレナード・コーエンだった。

ベン・フォスターのインタビュー。
http://eiga.com/news/20160617/26/
よく考えて話し込むんだな。俳優陣だと、デイビッドを演じたデイビッド・オダウッドもいいし、ギヨーム・カネの博士もうさん臭くてよかった。ジェシー・プレモンスが演じたフロイドも、自分の信仰からドーピングに迷う役柄で、これもよかった。あとボブ・ハーマンがダスティン・ホフマンなのに全然気づかなかった。今はこういう姿になってたんだな。
チョマサ

チョマサ