まちだ

俳優 亀岡拓次のまちだのネタバレレビュー・内容・結末

俳優 亀岡拓次(2016年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

公開を楽しみにしていました。好みがわかれるかもしれませんが、とても好きな作品でした。

顔は見たことあるけど、名前が出てこない、”名脇役俳優、亀岡拓次”の恋とささやかな映画人生を、「ウルトラミラクルラブストーリー」の横浜聡子監督が、ユーモアと愛情溢れる独特の筆致で描く。


横浜監督は、「ウルトラ〜」以降商業映画から遠ざかっていました。
(昨年は鈴木亮平回の情熱大陸内で、ショートフィルム「ホンスンドンスコスコ」を監督していました。)今回久々の商業映画です。

横浜監督は自身のシネフィル的側面をけしてひけらかさない監督で、オマージュも監督の味でしっかり味付けされています。これ見よがしな悪趣味なオマージュはしない。むしろ飾らなすぎるくらい。

本人のことは知らないですし、作品を見て、インタビューを読んで勝手に思っただけなのですが、ともかく、飾らない、愛の人なんじゃないかと思います。


ロケ先で出会った居酒屋女将安曇さんに恋をした亀岡。
居酒屋のテレビで、女宇宙飛行士が1400キロの距離を漏らさないためにわざわざオムツを履いて車で突っ走り、恋人の宇宙飛行士をスパナで殴り殺そうとした容疑で逮捕されたとニュースが流れる。

「また会いにきますね。オムツをはいて」
「スパナをもって?」
「いいえ、花束です」


スパナを花束に変えて安曇に会いに行く亀岡。しかし結末は…

この物語は、実際の人生では、まるで奇跡を起こせない男が、映画でささやかな奇跡を起こしていく話だ。

決して受け取られることのなかった花束。しかし物語のラストで、世界的映画監督から一輪の花を手渡される。

彼は現実では映画のように饒舌に愛を伝えられず、女性に愛されることもない。だが映画からはささやかに愛されている男なのだ。


またコメディ映画としても充分面白くて、
横浜組常連・野嵜好美の、スペイン語通訳のくだりは、山下敦弘監督「道」の自主制作映画監督役を思い出させてくれるし、
染谷将太演じるインディーズ監督の撮影現場での、フィリピン人素人女優とのアドリブシーンの「ケメオカ!」だったり、
舞台で大女優の乳を揉みしだく亀岡だったり、(三田佳子からヤスケンに、「良くぞ揉んでくれたわね」とのコメントがありました)

その他にもリアル亀岡・宇野祥平や、大物監督の山崎努など見どころたくさんです。
横浜監督の作品のなかで、
一番笑える作品とも言えるかもしれません。おすすめです。
まちだ

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