まちだ

劇場のまちだのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
4.1
「火花」(Netflix版、原作)や又吉自体は好きなんだけど、どうしても「劇場」原作は受け入れられなかった。
ダメ男がただ作者に甘やかされているように見えてしまう所が多々あったり、映画ではカットされてる青山とのあるシーンも嫌悪感を感じてしまった。

今作は原作の適切な取捨選択と映画でしかできない表現、山崎賢人の演技のおかげで最良の映画化になってたと思う。
松岡茉優の演技もあのラストがあるからこその序盤中盤のチューニングなんだ。
原作の「ここがこうだったらよかったのに」が、元の良さを殺さずほぼ完璧に修正されて生まれ変わってた。
モノローグ多用も使い方によってはうんざりするけど、今作に限っては原作のニュアンスを壊さず映画化するには最適なやり方だったのかなと思う。

東京に飲み込まれそうな2人には、あの部屋が1番安全な場所だった。「僕」は遅くもなく早くもなく、同じ速度で歩く人だけが好きだった。同じ速度で歩いていたはずの2人はいつのまにか歩幅がズレてしまう。
原付を壊す主人公、自転車の2人乗り。速度を一生懸命合わせようとするけれど、どうしても合わないんだよな。

取るに足らない、どこにでもあるようなダメ男と鬱陶しい女の恋。でも豊かなディテールに支えられた映画の力で私たちは否応なしに彼らの「その日」に引きずり込まれてしまう。

これはきっと、あのラストシーンのための映画。

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