60年代のイングランド北部で局所的に起こった音楽ムーブメント「ノーザン・ソウル」。ミュージシャンが生まれたのではなく、主にアメリカのマイナーなソウル・ミュージックをかけるクラブが大盛況だったそうだ。つまりリスナー文化である。しかもロンドンから遠く離れた地方都市でのムーブメントだった。
この頃のイギリスは「英国病」といわれた経済停滞期で、職につけない若者が町に溢れていた。そうした閉塞感から逃れようと彼らが頼ったのがクラブとドラッグだった。主人公とその親友もご多分に漏れずドラッグにはまっていくのだが、警察に追われて仲間の一人が事故死したことをきっかけに更生の道へと踏み出す。少しノスタルジックで、多分半世紀近く経ったからこそ描ける希望に満ちた映画だった。
人気DJが発掘してきた曲を探り出そうと、主人公たちがいろいろレコードを探す話が出てくる。インターネット以前には情報というのは足を使って地道に探すものであり、だからこそ貴重だったんだっけ、なんてことを思い出した。
同じ時代を舞台にした刑事物の英国ドラマに「ノーザン・ソウルの夜に」てタイトルのエピソードがあった。見たときはノーザン・ソウルが何か知らなかったのだけれど、この映画で思わぬところで謎が解けた。