「俺、やりもしないで諦めるのは嫌いなんです。それよりもやった方がいいじゃないですか。」
鋼鉄の入った窓。その窓に近づいて伸びをする男性が語り始めます。
その話を聞いているのは西島秀俊扮する高倉刑事でした。取調室での会話のようです。
そして一年後…高倉は刑事を辞めて大学の先生をしていました。
新しく引越した隣には奇妙な人が住んでいます。ただの変人だと思っていましたが…
なにか奇妙なことが起こっているとは分かっても、それが人に説明して理解してもらうには難しいようなことだとしたら、自分独りで解決しようとしてしまいそうです。
そうして誰にも言えず過ごしている間に、少しの不安や不満のすき間をついて、いつの間にかその奇妙な世界の中に入ってしまったら…そんなことは誰にでも起こりそうです。
北九州殺人事件をモデルにしているようですが、実際に起こった事件の恐ろしさを考えると人間心理の掘り方が浅いのではないかと感じます。
このような事件には、被害者に恐怖を恐怖と感じないほどの精神的な破壊が伴うと思うからです。
ホラー映画として観るには良いですが、稀に見る、史上凶悪な事件をモデルとするならば、もっと観る者が被害者になってしまうのが普通の心理であるように思わせるくらいリアルに描いて欲しかったです。
もっと心の動向を掘り下げることが出来たのならば、ただのホラー映画としてではなくヒューマン映画としても見ごたえのある良い映画になったと思います。
この映画では、被害者にならずとも逃げられるのに、いわゆるサイコパスになぜかハマってしまった不思議な人たちの話と感じます。
「あれね、鬼だと思います。」