塩辛亭ショッパイ

永い言い訳の塩辛亭ショッパイのレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
4.0
人生最悪の瞬間が、あまりにも唐突に訪れた。
自分が不倫している真っ最中に妻が事故死したと知ったら、誰しもがブームが去ったとか関係なしに「なんて日だ!!」と叫ぶと思う。
モッくんがどれくらいのペースで不貞を働いていたかにもよるけど、なかなかの確率。そりゃ涙は出てこないだろうなぁ。

この作品は何と言っても、タイトルがいい。『永い言い訳』ねぇ。もうこの世にはいない妻にか、泣けない自分にか、全編に及ぶ、永ぁ~ぁ~あ~~……ぃ言い訳。
ただ、モッくんが免罪符として選んだ他人の子を育てるという行為が、例え〝子育て風おままごと〟であったとしてもちゃんと作用しているのは紛れも無い事実だったわけで。ただ現実逃避するクズ男の話に終始しない描きこみの塩梅が素晴らしい。

加えて、死んでから妻を意識し始めた主人公だけに「妻との馴れ初め」「幸せの絶頂にいるふたり」「プロポーズの日」といった回想シーンをぶち込んでくるといった展開もありそうなものだが、そういったインスタントな展開もなし。…あぁ、いい塩梅! と舌を巻いてしまう。

それにしても、ドキュメンタリー番組撮影クルーの、「人の悲しみを食い物に」ネタが満載なのはなぜだろう。なぜここで急にコメディ? さすがに不謹慎な奴らとして描きすぎじゃないか、と思ったが、笑ってしまったのであまり文句も言えない。

しかし、何と言っても、撮影クルーたちが完パケ映像を前に「いやぁ~いいっすわ~」と絶賛した男、竹原ピストルの切実感たるや。正直、自分もモニターに映る彼をみて、勝手にディレクター目線で「いや~、これは高視聴率イケるんじゃないすかぁ?」と思ってしまった。本当に『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)に出てきそうな生々しさがやばい。

ちゃんと作家先生っぽくみえるモッくんの演技も素晴らしいんだけど、やはりMVPは長距離トラック運転手兼シングルファーザーの竹原ピストルでしょう。紅白のみならず、大河ドラマでも出てみたらどうでしょう。武士顔だしねぇ
塩辛亭ショッパイ

塩辛亭ショッパイ