セトヤマ

ディストラクション・ベイビーズのセトヤマのレビュー・感想・評価

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暴力、暴力、暴力。

映画で描かれる、暴力、
それは災害の様に、いかに抗おうとも、
最終的には全てを破壊する。

柳楽優弥が演ずる泰良というキャラクターは、
何故という疑問を吹き飛ばすほど強力だ。
誰かに喧嘩を売り、負ければ這いつくばり、
けれど起き上がり、また戦いを挑み、遂には相手を叩き潰す。
そして次の相手を探しては、暴力を延々と連鎖させていく。

そこに、何かがあるわけではない。
「その暴力は純粋である」と表現しようか、
純粋な暴力。
まさに自然の様だ。

それに対して、恐怖なのか、羨望なのか、
どちらにしてもそれは信仰の対象となる様な、
その狂気に様々な人が影響を受けていく。

特に面白いのは、
自分の中で、始めは彼は人間である、と思っている所だ。
しかし映画が進めば進むほど、それは疑問に変わる。
彼は果たして人間なのか、
そしてラストではそれが提示されない、
いや、逆にもう彼の全貌は掴めなくなってしまった。

そんな怪物だからこそ、周りの歪み、禍々しさをより感じずにはいられない。この世界の歪みが心に突き刺さる。