タイレンジャー

ヒトラーの忘れもののタイレンジャーのレビュー・感想・評価

ヒトラーの忘れもの(2015年製作の映画)
3.5
「地雷は完全なる兵士」 - ポル・ポト

カンボジアで4年足らずの間に200万人の自国民を死に追いやった独裁者の言葉です。

食料・燃料・休息を必要とせず、安価で(安い地雷は300円くらい)、いちど設置したら半永久的に働き続ける地雷。
ポルポトはそんな地雷を究極の兵器・兵士として扱い、おびただしい数が国内に埋められ、今もなお200万個は残っていると言われています。

地中に埋められた地雷の捜索・撤去には時間と手間を要し、何よりも非常に危険な作業なのは明らか。

対人地雷が恐ろしく、また悪質であるのは、「人を殺さないこと」を目的としているからです。

殺さずにあえて負傷に留めておくことで敵兵に精神的な打撃を与え、救援活動などで兵力と費用を削ぐことができるというものです。
だから、多くの対人地雷は手や足が吹き飛ぶくらいの威力で、即死には至らないのだとか。

本作の舞台は第二次大戦終結直後のデンマーク。捕虜となった無数のドイツ兵の大移動から幕を開けます。
大戦中はデンマークを支配下に置いていたドイツ。負の遺産としてデンマークに残された220万個の地雷をいったいどうするのか?
積年の恨みを晴らしたいデンマーク軍はこの地雷撤去活動をドイツ軍の少年兵たちにを強制します。
ニキビが似合いそうな中学生か高校生くらいの少年たちですよ。

デンマークはなんちゅう酷いことをしてくれたんだと思ってしまいがちですが、本作は当のデンマークとドイツの合作なんですよねぇ。
両国ともに贖罪の念があってこその一本ですわ。

地雷撤去のシーンは息を飲む緊張感ですよ。いつ吹き飛ぶかわかりませんから。それが男の子たちだから余計に辛いのです。

ただ、少年兵たちを監督する立場のデンマーク兵がいて、徐々に少年兵たちと打ち解けていく展開もあって救いのある話にはなっています。歴史学習の教材としても、一本の作品としてもいい映画ですよ。

でも、一見丁寧に作られているようで、話の運び方は少し雑だったり、人物描写は書き込み不足かなぁと思う部分もあったり。
いい映画なんですけどね。