emily

ザ・ギフトのemilyのレビュー・感想・評価

ザ・ギフト(2015年製作の映画)
4.0
引っ越ししてきた夫婦のサイモンとロビン。子宝にはまだ恵まれていないが、幸せな日々を送っている。ある時サイモンの高校時代の同級生ゴードことゴードン・モーズリーに再会するが、サイモンは全く覚えていなかった。その日からゴードのプレゼントが始まる。徐々にエスカレートしていくギフトは不気味さを増して行き、異変が起こり始める。そうして明かされる最後のギフトとは・・

閉鎖的に新しい家を見せ、ロビンが段ボールのガムテープを剥がすその音から不信感と恐怖を植え付ける。全身ガラス張りの豪邸ガラス一枚で外から丸見えの恐怖が、ギフトとゴードの訪問に良い効果を与える。

サイモンの職場での様子や地位をしっかり描く。日常の職場での会話の隙間から彼の性格が少しずつ見えてくる。ゴード対サイモンのいわゆる復讐劇であるが、感情移入の対象がめまくるしく移り変っていく。被害者、加害者が見事にスリリングに逆転してみせ、その合間に職場でのいざこざ、夫婦関係もしっかりと組み込むことにより、人間性はもちろん、ストーリー自体にも深みをあたえ、何もない普通の日常にも見えない”何か”を想像させ、恐怖とスリルが先行していくのだ。

サイモンが今までかくしてきた本当の自分。子供のころから着実に構築されて行ったサイモンをいう外の顔。偶然の出会いがなければ、それは明かされることはなかったかもしれない。二人は偶然の再会を果たすことで、ゴードは眠っていた怒りと再び向き合う。しかし彼もまたその過去をきちんと向き合い乗り越えれないままこれまで生きてきたのだ。この再会は偶然ではなく必然である。過去を乗り越えるため、そうしてサイモンは自分自身と向き合うため必要な出会いだったのだろう。

二人の間で揺れ動くロビン。夫婦というのは信頼関係の元に成り立つ。ほんの一筋の疑いが生まれるとそこから綻びは広がっていくのだ。夫を信じつつもゴードに人としてのシンパシーを感じてしまう。そこにロビンの人としてのやさしさがにじみ出ている。疑惑の払拭するように毎朝ランニングする。その後ろ姿、すっと伸びた足もしっかり描写し、サイコスリラーの合間に艶やかな女性らしさを楽しめる息抜きの時間も与えてくれる。

冒頭から不穏な空気を引っ張りつつ、それが確信に変わっていく。加速し始めたら、すべてが恐怖に見え始める。ラストの畳みかけでも信じる対象がころころ入れ替わり、最後にギフトはぞっと背筋の凍る思いを残す。ラストのとらえ方は人それぞれで観客にゆだねられる訳だが、個人的には許し許されるラストのように感じられた。生まれながらにして悪人なんていない。

いじめっ子も、いじめられっ子も、そこに至る過程があり、そうして人はいつでもやり直せるし、改めることができると信じたい。最後のギフトは残酷でそれにより、苦しむことになるが、そうやって苦しむ機会を与えられ、それを受け止めることができるというのが大事なことだと思う。自分が行ったことはそれなりの形で代償を追うことでしか前には進めないと思うから。
emily

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