※ネタバレ注意
傑作。
《全面ピンク色のバービーの世界『バービーランド』で暮らすノーマルタイプのバービーが、自身に起きたある異変を元通りにするため、恋人のケンと一緒に現実世界にやってきて・・・》
まず、僕は今回、この映画をちゃんとレビューできる自信が全然ないです。
なぜなら、僕はバービーを全くと言っていいほど知らないから。
だって、バービーは"女の子のおもちゃ"じゃない。
唯一の接点が『トイストーリー3』で、あとは新聞やメディアでバービーについての記事を読むぐらいか。
僕が好きなのは『きかんしゃトーマス』
本作を鑑賞したのも、マテル社が企画している『きかんしゃトーマス』実写化映画がどうなるのかを確かめるためで、正直に言うとバービーは二の次三の次でした。
しかし、本作が映し出したものは、そんな"バービーは女の子のおもちゃ"という今までの固定概念や決め付けからの脱却であり、バービーに触れたことがない人でも心打たれる物語に仕上がっている。
勿論、バービーのマニアックなネタも満載で、元の人形に対するリスペクトがとても強い。
『トイストーリー2』のNG集でバービーがジジイのセクハラを受けていた頃や、マテル社が制作したCGアニメ版『きかんしゃトーマス』に対する否定的な意見に対して、「本作が嫌なら旅番組を見ればいい」と言い放って大顰蹙を買った頃と比べると大きく進歩したなと思う。
本作は限りなく二次創作の作風に近い。
バービーがバービーの世界でバービーらしい物語を繰り広げるのではなく、バービーが社会に与えた影響や功罪そのものにフォーカスを当てている。
バービーが実際に現実世界にやって来た時の異質さ。
バービーランドに"男社会"が入ってきて世界が破壊されていく様子。
現実世界で生きる女性がバービー達に熱弁してアイデンティティを取り戻させる戦略。
現実で起きている問題を作品に取り入れることで本質が浮き彫りとなり、作品そのものが成長していく。
実はこれ、全く同じことが『きかんしゃトーマス』の世界でも起きていた。
『きかんしゃトーマス』の最初期は本作で言うところの"ケンダム"で、登場人物のほぼ全員がイギリス出身の男性キャラ（※トーマス最初期の時代設定は第二次世界大戦前で、当時は鉄道は男性の仕事として認識されていたからしょうがないことではある）
だけど『きかんしゃトーマス』には"鉄道には様々な仲間がいるよ！"という多様性も込められており、そこから物語が発展していったのね。
やがて女の子の蒸気機関車がトーマス達の仲間となり、国連のSDGsとのコラボを経て五大陸を駆け回るようになり、今では世界中の機関車が登場するまでに至る。
https://toyokeizai.net/articles/-/275323?page=2
つい最近では新幹線がソドー島にやって来た。
そう、日本の新幹線だ。
信じられるか。
新幹線だぞ！
トーマスが果てしない好奇心に駆られてソドー島を飛び出していったあの時のワクワク感。
この『バービー』にはそんな"どこまでも行ってみよう"とする喜びが詰まってる。
あと、役者の演技が別のベクトルで凄い。
なぜこのような狂気じみたことを素でやれるのかと畏怖の念を感じた。
一番心に残ったのが、クライマックスでライアンゴズリングが「僕はケーン！」と叫びながら滑り台を滑るシーン。
凄く微笑ましいけど、42歳の大物俳優に何させとるんだ💦
個人的には『きかんしゃトーマス』実写化企画に希望が湧いたので大満足です。
いつになるのか分からないけど凄く楽しみ。
『きかんしゃトーマス』の話しかしてませんね。
本当に申し訳ない。
【余談】
旧Twitterのあの騒動は、明らかに米ワーナー公式アカウントのミスだった。
あのネタを最初に作った人は、人を傷つける目的でやった訳じゃないんだろうなと僕はそう思っている。
公開日が同じだからという理由だけで無関係な作品をコラボさせて、そのミスマッチさを楽しむネタは今回が初めてじゃないから。
（※一例 https://automaton-media.com/articles/newsjp/20200222-114647/）
ところが、そこに公式が絡んできたから別の邪悪なものにへと変異してしまった。
際どい二次創作ネタを公式が取り扱うことで、作品自体がアイデンティティを失ってしまいかねない。
その、他者を存在を大切にし、本当の自分らしさに気付く物語なのに、そのメッセージ性から逆行するネタに同調するとか、一体何考えているんだ？
やめたらTwitter？
僕が言いたいのはそれだけです。
【追記】
素晴らしい作品だけど、ラストだけはどうしても受け入れられない。
トーマスがずんぐりむっくりなタンク機関車であるようにバービーは人形だ。人間じゃない。
"やくにたつきかんしゃ"を捨てたトーマスなんてトーマスじゃないよ。
