【前評判がカナリ波乱に】
心無い(恐らく映画に関心のない)輩に、オッペンハイマーとのコラ画像を拡散されて謝罪までした問題作。というのが、観る前の印象。
劇場で観たCMが、「2001年宇宙の旅」のオマージュパロディで、期待が大きく観ることは早くから決めていた。
振り返ると、風評被害なのか劇場には親娘が3組と、女性だけ。つまり、男性は私一人という独特の雰囲気でもあった。
【名作は評価、好みが分かれやすい】
さて、SNSでの評価は「ただのクソフェミ映画ではない」とか「アメリカ大丈夫か?」という賛否の振り幅がデカい映画で、その事からもタダモノではないと伺える。製作と主演をマーゴット・ロビー。監督・脚本は、グレタ・ガーウィグ、そしてバービーのオマケのケン役には、ライアン・ゴズリングという、豪華キャスト。
「フェミニズム映画」という色眼鏡だと、一見そうは思えないジョン・シナまでノリノリで「人魚ケン」で登場する。
【ラ・ラ・ランドを越えるコメディ・ミュージカル】
映画は、冒頭15分でそのジャンルや性質を明示することが多い。論文で結論から入るようなもので。
冒頭、「2001年宇宙の旅」のパロディから入る。そしてバービーランドは、毎日パーティ!なので、歌って踊るため、ほとんどがダンサー。つまり、ミュージカルとして観ることができる。もちろん、ライアン・ゴズリングも名曲「ケンの歌」を歌いあげる。そして、シム・リウがキレッキレのダンスを魅せる。
あとで気づいたことだが、冒頭の人形のくだりは、グレタ監督がバービーで「エセ多様性の世界」をぶっ壊すという意味も含まれていたのかもしれない。
【らしさを越えたところに個性がある】
この作品は、単なるフェミニズム映画ではない。(もちろん、主要なルートで語られるテーマではあるが)バービー&ケンという鉄板ステレオタイプからの脱却を通して、現代社会が抱える「らしさ」を越えた先のアイデンティティがテーマであるように感じた。特にケンの自分探しの迷走は、コメディタッチで描かれているため「フェミニズム」と受け取られるかもしれないが、主人公のバービーこそ“何にでもなれる”と言いながら「生まれながらのバービー」というステレオタイプを抱えていることに気づくのだ。
誰にでも可能性はあるが、自分のパッケージを破らなければ変われないことを、この作品は教えてくれる。
【名コメディアンによるシニカルな笑い】
冒頭の「2001年〜」のパロディに始まり、風刺の効いたギャグが散りばめられて、大人も楽しめるコメディであることが、もう一つの側面だ。難しい話を抜きにしても楽しめるのは、素晴らしい。特に、ライアン・ゴズリングの(当て書き)ケンは、最高に笑えるのにケンらしさを失わない。シリアスな映画とは違う魅力がある。
他にも、「アグリー・ベティ」のアメリカ・フェラーラやベテランのコメディエンヌ・コメディアンが多数主演している、コメディ映画だ。