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バービーのOmakeのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.8
観た時からだいぶ時間が経ってしまった。
とても楽しんで観た記憶がある。

初っ端、「2001年宇宙の旅」のパロディで幕を開け笑わせてくれた。女性が進化するのかどうかはわからないけれど、母になり子育てをする擬似体験のために女児達に与えられていた赤ん坊の人形を少女たちが自ら叩き壊して、職業婦人を模したバービーを手に入れる!
人形の方は進化し続けて完璧で理想的な女性上位の世界が構築されるに至る。そしてそこでは男性でさえも女性讃歌の一端を担うアイコンとなってしまっていた。その完璧な秩序を保った公平で公正な世界でケンが反乱を起こす。バービーも自分探しの旅に出る。

人間社会の建前を反映した人形の世界から逃走した彼らは、彼らを作り上げた人間社会の現実に直面する。

矛盾ある社会の理想を押し付けられる完璧なペルソナというのはハリウッドの俳優やポップスター、スポーツ選手も同じか。そこまでいかなくとも私たちは日々バービー達のように美しく公正に生きることを求められている。ソーシャルメディアの登場でその傾向は加速している。

けれども肉体を持って生まれた人間は実際にはそんな世界に収まるものではない。

頭の中にある質量の無い社会と物理的な世界の対比を見たと思った。
映画『マトリックス』では過酷な現実を生きるか、安寧で居心地の良い世界の夢を見て過ごすかの選択を迫られた。
バービーランドはマトリックスのように少女達が安心して生きられる場所だ。でもいずれ彼女達も成長しそこを出ていかなければならない。

通信環境の進化によって世界が見えているような気になっているけれど、実際に手にできる世界は小さなものだ。にも関わらずそこは大小様々なわずらわしさに満ちている。

だからバービーに夢を託して羽ばたくのが悪いわけでは無い。そのうちハイヒールを脱ぎ、ガラスの靴に頼らず、地に踵をつけ自分の足で歩き始める日がやってくる(と信じたい)。




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