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9.11~N.Y.同時多発テロ衝撃の真実のTSのレビュー・感想・評価

4.6
【永劫残されるべき衝撃映像】96点
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監督:ノーデ兄弟/ジェイムズ・ハンロン
製作国:アメリカ/フランス
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:130分
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今思い出しても鳥肌が立つ衝撃作。今後数百年経っても、21世紀開幕の年の大事件の証拠として語り継がれるであろう、映像資料的価値の極めて高い映像です。ドキュメンタリー作品としてどうとか言うよりもうそれに尽きる。よくぞこんな映像をリアルタイムで撮れたものだと感心するとともに、2000名以上が亡くなったこの事件の恐ろしさを痛感できるものとなりました。

いわずもがな2001年9月11日に発生した9.11同時多発テロを収録したドキュメンタリー作品です。ただ、類似作と圧倒的に違うのは、ほんの偶然にもリアルタイムでその事件を撮ってしまったということ。というのも、今作を手掛けたノーデ兄弟は映画撮影にはまだ慣れていなく、成り立ての消防士が数ヶ月で勇敢な男になっていく有様をドキュメンタリーにしようと思っていました。従って、この作品の冒頭30分は、ニューヨークの消防士たちの日常を映しています。面白いのは、案外火事が起こらないということ。それはそれで幸福なことなのでしょうが、実際は誤報であったり、小火であったりと、我々が想像する火事というのは日常茶飯事ではないそうです。
消防士モノであれば『バックドラフト』を鑑賞すれば大体わかるのですが、ドキュメンタリーを通して改めてその中身を少し理解しました。しかし、命をかけてる職業なので、たまに発生する火事に対応するだけでも命取りでしょう。消防士とは、そういう身も心も熱い勇敢な人物が多いようです。当然、ノーデ兄弟としては物足りない感じでして、何か起こってくれないかなあ。というと隊長に不謹慎であると叱られます。そりゃあそうですよね。

ところが奇しくもそのノーデ兄弟の願望が叶ってしまったのか、この兄弟は人類史上最悪級の大事件を捉えてしまいます。いつも通りの朝、ガス管の点検という作業のためにニューヨーク市内に出動する消防士一同。もちろんノーデもこれについていく。この一連の映像は未来永劫残されるべき映像です。不穏な飛行機の音を気にしてノーデが向けた先には。。とんでもない。これ以降は今作は一気に『クローバーフィールド』のようなパニックPOVと化します。が、当たり前ですが今作はドキュメンタリー。その驚愕度は比べ物になりません。消防士たちの頭によぎる、「最悪の一日になるかもしれない」は実に的を得ていました。
WTCに到着してからもその緊張は途切れることもなく、むしろ上がっていきます。ところどころに鳴り響く重い音。それに対し一瞬固まる消防士たちがリアルすぎて涙がでてきそうです。この重い音が何を示すかわかるからです。そして、我々の脳裏に浮かぶのは、「崩壊するから早くその場を離れろ」ということです。しかし、現場の消防士たちには何が起こっているのかわからないまま、そのまま映る結末。果たしてこの惨劇はノーデの不謹慎な考えへの報復か。いや、それにしては凄まじすぎる。

後半は事件後の瓦礫から人を救う映像が収録されています。ノーデ兄弟の配慮もあり、今作には遺体などの目を背きたくなるような対象はほとんど出てきません。また、WTCの人がどう行動したのかなどという情報は一切なく、あくまで消防士たちを軸にしています。しかしそれが今作の凄いところでしょう。間違いなく飛行機に乗っていた人、WTC78階あたりにいた人が一番気の毒ではありますが、死ぬ確率が極めて高いとわかっている現場に駆けつける消防士たちもまた然りです。しかし、彼らには一切の余念がない。留守番をしている消防士ですら、留守番を放棄してでも現場に駆けつけたいという気持ち。凄まじい職業魂と感じました。

以上のことから、今作は第一級的映像価値を備えた衝撃作であると断言できます。その衝撃映像の部分はメディアで見たことがある方が多いと思いますが、その前後となると果たしてどうでしょうか。中盤以降は手ブレが激しいので映像酔いするかもしれませんがこれは仕方ない。どんなプロのカメラマンでもああなってしまうでしょう。タグで文句なし傑作としていますが、傑作という言葉はやや不謹慎であると思います。本当はこんな映像、ない方がよかったのですから。改めて事件で亡くなった方のご冥福をお祈りします。
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