A8

ルームのA8のレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
3.7
7年間家屋で監禁されていた主人公とそこで生まれた息子の物語。

失われた7年間の長さそして辛さやその後監禁から解放された彼女たちの社会に適応しようとする姿を上手く描かれていた。

17歳からの7年間何者かに監禁をされ、自由を奪われるという想像し難い苦しみはもちろん、社会に戻っていき適応しようとするが“心無い記者からの質問”により自分を責める主人公の苦しさが終始描かれていた。
だが、そんな彼女がここまで生きてこれたのは“息子”の存在が大きいのだろう。自分を責めた主人公は脱衣所で自殺未遂をしてしまうが、なんとか一命を取り留めた。そんな母親に「髪の毛にはパワーが宿っている」という教えを信じた息子が大事にしていた髪を切る母親に渡すというシーン。
壮絶な監禁生活。そして、社会に出てからも苦しみを感じることになった彼女は“愛”息子からの“愛”により、前に一歩進んでいけるパワーをもらったのであろう。

そして、娘が監禁された夫婦は7年の月日が経ち離れ離れで暮らすことになっていた。
娘が戻ってきて喜びに満ち溢れる父と母。だけど、娘の子どもをみるや否や、父のどこか困惑し、受け入れ難い表情は複雑な心情を伺うことができる。
あの誘拐犯とは裁判を含め一切関わらないと静かながら固く訴え、決意したシーンの一連からみればよく理解できる。

一つの事柄は、複数の作用をもたらす。監禁され、発見し、保護できたら事件解決。でもそこが本当の終わりではないのだ。保護された娘はもちろん、父や母、周りの人たちの人生に大きく影響し、失われた時間や心、家族の絆、、、。そういった複雑な事柄も丁寧に描かれている。そして、人生を“広い世界”で再び生きていこうとする決意がみえた。

最後、息子のリクエストで監禁されていた家屋を覗きにやってくるシーン。彼の「この部屋縮んだ?」と純粋に母に聞くのである。
ほんの少し前までこのあまりにも狭い空間しか知らなかった彼はもういない。
人は適応能力がある生き物である。この広い世界で自分に合う場所を見つけることを考えた時、とてもワクワクする感覚を覚える。
かつていた場所が小さくみえた彼、そのようにして人は成長していくのだろう。

感情溢れるであろうシーンばかりなのだが、すべてが感情!感情!ではなく、うまーく自然に演じられているのがすごいと思った。
A8

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