MISSATTO

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男のMISSATTOのレビュー・感想・評価

3.5
冷戦期の赤狩り時代ブームなのかな??まぁ、今の時代に重なるから警告の意味もあるんだろう…
できれば、コーエン兄弟の「ヘイル、シーザー」と同時期にこの映画も公開して欲しかったな。「ブリッジ・オブ・スパイ」もできればセットで見たかったところ(笑)

このあたりの歴史は概ね知識としては知ってたけど、トランボを通して、しみじみ世の中をコントロールしたい(各業界にいる政治的権力を好む人間も含めた)政治家にとって、言葉を巧みに操る人間は脅威なんだな、ってわかる映画でした。…だから政治家も言葉巧みになっていくんだろうけどね…

内容は、民主主義の名の下に行われる言論、表現、思想の自由に対する「弾圧」や「迫害」の話。
トランボに対してだけではない。当時映画がもっとも影響力があった媒体だったから槍玉に挙げられ、結局のところ一般市民にまで及んで行ったのだから、一体共産主義国家が行っていたことと何が違ったのだと思わざるを得ない。
ヘレン・ミレン演じるヘッダ・ホッパーがユダヤ人の映画会社経営者に対して「言うこと聞かなければ…」と脅すシーンがとても象徴的。
唯一当時救いだったのは、どっぷり資本主義社会だったことだろう。金を儲けることに貪欲な人間が、観客を集めることができる脚本を書けるトランボを利用せずにはいられないのは必然だ。それをトランボも良くわかっていて利用していく過程はワクワクさせられる。
映画の中のトランボは、共産党員でありながら、誰よりも自分の表現したいものを表現し続けられる民主主義的社会を熱望し、資本主義をうまく利用した人間に見える。
こういう伝記映画や、ひいてはドキュメンタリーでさえも、完全にニュートラルに描くことはないと思っているので、正直どこまで本当か分からないけど、少なくとも一本筋が通った思想の元で行動をした人間だったのだろう。

最後のトランボの言葉がこの映画が伝えたい結論をまとめてくれていて分かりやすく、エンドロールの当時の実際のトランボインタビューが、赤狩り当時の狂った社会を総括して表していたので、総じて分かりやすく面白かった!という印象で見られると思う。
歴史を学ぶにもオススメの映画。
MISSATTO

MISSATTO