好き勝手なてそ

帰ってきたヒトラーの好き勝手なてそのレビュー・感想・評価

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
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久々に見返したのでレビュー書きます。

■あらすじ
2014年ドイツ、ベルリン。突然アドルフ・ヒトラーは目覚めた。
彼は戸惑っていたが、新聞屋に助けられ徐々に状況を理解していく。やがて、テレビ局をリストラされたザヴァツキに声をかけられ、ドイツを巡業する番組を作る旅に出ることに。果たしてドイツ国民の反応はーーというような話。

コメディに仕立てているが、しっかり社会派の作品です。

犬がかわいそうなことになります注意。


■ざっくり感想

戦争やナチスのこと、ユダヤ人迫害のこと。
経験者がいなくなると、全く忘れ去られてしまうということの恐ろしさを教えてくれる。

歴史もの戦争ものの映画が教養不足で苦手な人でも、かなり見やすくなるように作った映画だと思う。
というより、そういう人こそ見たほうがいい。


「ヒトラーは昔の人でしょ。現代じゃありえない」「独裁者なんて選挙制度があるんだから選ばなければいいじゃん」というような、
ナチス政権は昔のことと切り離して考えるような現状がドイツの若者にはあり、その危険性を提唱しているように見えた。

日本にも似たような危険はあると思う。風化してはいけない出来事ってきっとたくさんあるはずなんだけど…。

細かいコメントは下に書きます。



ーー以下ネタバレ含みますーー


■なぜ独裁者が誕生したか。
移民問題が序盤からかなり出てくる。
ヒトラーの独裁政権は悪だとは皆思ってるけど、たとえば移民により自分達の生活が苦しい人たちにとって、「移民の排斥」を訴えている政治家が一人しかいなかったらどうするだろう?
ドイツ巡業をしているとき、移民問題についての市民の声にヒトラーが反応し、市民はヒトラーの反応を見て支持したいと呼応していく。
しかし、移民をどうにかすると言っても手段について語られていない。
ヒトラーは、ブリーダーに育てられた犬(狂犬病などではない)に噛みつかれると銃殺してしまうが、排除したいものに対して手段を選ばないスタイルは変わらないのに、人々はその異常性もすぐ忘れてしまう。
映画の終盤でも、ヒトラーはユダヤ人に対する考えを変えていなかった。
つまり、現代でヒトラーが政治を行った場合、またゲルマン民族以外を排除しようとするだろう。それも手段を選ばず…。
そこまで起きてしまったころには手遅れ。
すべて「選挙によって国民に選ばれた」のだから…。


■ヒトラーのポピュリズム
いわゆるポピュリズムの危険性にも触れていたと思う。
ヒトラーの現代での政治の進め方は、幸運にもテレビ局とつながりのあるザヴァツキに見つかり、YouTubeのような配信媒体をつかって簡単に拡散され、テレビや書籍に映画と様々メディアで広範囲のターゲットに訴え、ファンが急増していた。
最初は若者の軽いノリでネットのおもちゃ的に紹介されることにより、あたかも危険性のない人物のように錯覚させる。
だけど、ヒトラーは一切嘘をつかない。それを皆がギャグだと思っただけ。
若者からも支持を集めていったが、彼らは本当にヒトラーの政策を理解しているだろうか?
ヒトラーは現代でもずっと、ガスマスク用のちょび髭だったね。

ーー

テレビ局のゼンゼンブリンクが局長としてのセンスがなすぎて窮地に追い込まれたシーンは、初めて見た時は無知で全く気づかなかったけど、
ヒトラーの最期の地下壕での出来事のオマージュですね。
別作品の映画「ヒトラー 〜最期の12日間」は未鑑賞なので、近いうちに見てみようと思う。