Masato

リメンバー・ミーのMasatoのレビュー・感想・評価

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
4.6
愛してることを忘れないで

メキシコの文化を下敷きに描かれるファンタジーアニメーション。

ガエルガルシアベルナルの歌声が哀愁たっぷりで素晴らしいので、字幕版推奨です。

メキシコ人のアニメーターが製作に関わっているので、ハリウッドで日本を描くとよくある「マチガイ日本」のような歪んだ文化ではなく、すべてちゃんとしたメキシコの文化を描いています。なので、本作で描かれているお線香のようなものとか、お盆のようなものはすべて実際の文化です。南米大陸なのに東洋の文化と似たようなものがあるのが不思議。「この世」と「あの世」があることや、橋が三途の川みたいな役割を担っていたり、日本人なら違和感なくこの文化を親しめると思います。逆に西洋文化のアメリカ人が見たら、この文化はとてつもなく違和感を覚えるでしょう。

かつて祖先に家族を捨てて音楽への道を歩んでしまった人がいるために、ミュージシャンを夢見る主人公のミゲルは代々家族に受け継がれてきた「音楽の禁止」を余儀なくされます。それでも、ミュージシャンになりたいと夢を捨てきれないミゲルは歴史的大スターだったミュージシャンのギターを盗んで、ふとした瞬間に死者の世界へと迷い込みます。

まず、純粋な映画の面白さとして、2つの世界を行き来するアドベンチャーとか、 あっと驚かせる展開などが見ていて非常に面白い。特に面白かったのが、死者にもまたさらに死が待っているということ。今生きている人がその死者(祖先)を忘れてしまうと、跡形もなく消えてしまう。それは、自分の存在と認知が、もうどこにもなくなるということを意味している。こんなにも恐ろしいことはない。
しかし、その設定がこれ以上にない感動を与えてくれる。「自分の存在が忘れ去られても、いなくなってしまっても、あなたを愛していることを忘れないで。」という、死者も生者も超越した家族と世代の物語が生まれてくる。ラストシーンはあまり泣かない自分でも涙をこぼしてしまった。その感動の一瞬がメインテーマソングの「Remember Me」に詰め込まれている。


ここからはこの映画の背景にある社会性。この時期にメキシコが舞台の映画をピクサーが作るということは、なんらかの社会的意味を持つだろうという予想は立っていた。その通りに多大な社会的意味を持つ映画になっていた。

ピクサーはアメリカにおいてメキシコ=悪になっていることに対して、メキシコの文化をテーマにすることで、メキシコに興味を持ってもらおうとしたのではと思います。トランプが類型化して差別するので、国民はその言葉に丸め込まれ、本当に知るべきことを見過ごしてしまいます。そんな時だからこそ、「知ろう」という興味は必要なのです。

ストーリーの中にも隠れたメッセージがあります。
語るものだけで家族が代々音楽を禁止するという行為や、ひとつ覚えに音楽を禁止している様は、語るものだけに囚われて本質に直面していないということを意味しており、大衆迎合主義や類型化を想起させる。

ピクサーの醍醐味である、子どもには子どもなりに楽しめて、大人は大人なりに楽しめる素晴らしい映画でした。ズートピアに次いで好きなピクサー映画です。

主観的評価 47点
客観的評価 47点
94点
Masato

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