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フランス組曲のTSのレビュー・感想・評価

フランス組曲(2015年製作の映画)
3.5
【ドイツ将校との禁断の恋】
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監督:ソウル・ディブ
製作国:イギリス/フランス/ベルギー
ジャンル:戦争・恋愛
収録時間:107分
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感覚的に、『無防備都市』と『戦場のピアニスト』を足して2で割った感じです。その名の通り、パリがドイツ軍に占領され無防備都市になってしまう箇所や終盤の銃殺シーンなどは前者を思い出しますし、ドイツの将校がやや慈悲深いところや、音楽が少し関わっているところは後者を彷彿させられます。

今作は、実際にアウシュヴィッツに投獄されていた女性イレーヌ・ネミロフスキーの未完の原作から製作されているものです。原作を書き終えれずに亡くなってしまった彼女。しかし、60年後にこの原稿が脚光を浴びて小説化したらしいですね。おおよそフィクションでしょうが、時代背景はリアルそのもの。このドイツ将校とフランス人女性の恋愛は、彼女の望むものであったのか、はたまた皮肉なのか。

戦争に駆り出された夫を待つ主人公リュシルと、ドイツ将校のブルーノ中尉が禁断の恋に落ちていくという物語です。最初は、戦争に駆り出された夫を裏切ってるじゃんかということでふしだらと思いましたが、この中尉が中々の優男。まあこんな状況下なら欲望も溜まってしまうというわけで、仕方ない展開なのかもしれません。いや、しかしやはりドイツ将校と恋愛をするなんて当時の他の人からすると恥さらしのようなものでしょう。一般的にはこの当時のドイツ将校は間違いなく敵なのですが、必ずしも敵としても描いてないのが今作の最大の特徴だと思います。恋愛に人種、立場などないということでしょうか。

物語の本筋に関してはあまり共感出来ませんでしたが、見せしめにある人物が銃殺されるシーンなどはかなりリアリティがありましたのでショッキングでした。やはりドイツ軍と相入れることは不可能なのか?恋愛物語ですが、真っ先に批判されるべきドイツ軍を巧みに利用してる影響により、もっと深い意味をもつ作品に仕上がってしまっています。

ちなみに作者は小説において一度も「ナチス」という言葉を使用しなかったそうです。「ナチス」というと最早絶対的である負のレッテルが貼られると思ったからでしょうか?確かにナチスというより、ドイツ軍と表記した方が幾分か負のイメージを回避出来そうです。

エピソードなどを鑑みると相当深くて良いものなのですが、一本の作品として見ると個人的には平均的といったところ。しかし、評価は高いので一見の価値ありかもです。
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