このレビューはネタバレを含みます
ハリウッドのお涙頂戴ファミリードラマの製作者がこれを観たら、真っ青になるか怒り出すだろう。
もちろんハネケはそういう意図でつくっているに違いない。
人物関係や状況がわかりにくい。
しっかり見てないと置いてかれる。
わざと会話が聞こえないようにしているシーンもある。
不親切、なところもある意味、親切すぎる映画に対する皮肉なのか。
ほぼ音楽なし。
都合の良い展開なし。
あからさまに感動を誘うシーンもなし。
大団円もなし。
ハネケってハリウッド映画が大嫌いなんだろうなぁ(笑)。
I⭐️JAPANのTシャツには意味がある。
スマホやパソコンの画面が多用されている。これにも意味がある。
チャットでしか描かれない不倫現場は無機質で滑稽だし、大きな崩落事故ですら、監視カメラの映像を通して無機質に映し出される。
相変わらず余韻がすごい。
この映画のタイトルが「ハッピーエンド」とは(笑)。
「ハッピーエンド」の意味を考えさせられる。
観終わった後にジャケ写を観ると、心温まるファミリードラマみたいで苦笑してしまうが…
さらによく観ていると、ゾッとしてくる。ジャケ写全体がスマホの画面になっている。
最後、お爺ちゃんが車椅子で海へと入っていく様子を、孫娘はスマホで撮影する。
スマホの画面というフィルターを通してその光景を眺めている。
あとで友達に送るつもりなのだろうか。記録用なのだろうか。
感情はまったく見えない。
映画を観ているわたしたちも、他人の人生や出来事をそういう目で眺めていないだろうか。
ご丁寧なお涙頂戴の演出や派手な音楽がなければ、わたしたちは感情移入ができないのだろうか。
ひとつだけ明確なメッセージは、「自分の頭で考えろ」
ああ、なんだかやっぱりよくわからない。
ハネケってほんと意地悪だ。