イルーナ

レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラードのイルーナのレビュー・感想・評価

3.7
【情熱の国メキシコ 伝説のガンマンに ジョニデが 出会った】

超低予算の『エル・マリアッチ』から始まった本シリーズ。
本作ではついにメキシコの命運をかけた一大決戦!という所までスケールアップしてしまいました。
一介の間違われたミュージシャンがメキシコを守る英雄に……思えば遠くに来たもんだ。
立派なA級作品になっただけに、俳優陣もジョニデ筆頭にミッキー・ロークやウィレム・デフォーと豪華に。

一方で、A級作品になったためか前作と比べて洗練された空気になっていて、あの異様にむさ苦しく泥臭い雰囲気はすっかり鳴りを潜めています。
さながら、前作が土着のメキシコだとしたら、本作は観光地化したメキシコと言ったところでしょうか。
また、本作は様々な勢力が入り乱れ腹の探り合いをするという陰謀劇がどちらかというとメインで、バリバリのガンアクションを期待してると「あれっ」となりそうな内容。
そもそもマリアッチ側の描写がどうにも精彩がなくて……愛する人を殺され復讐のため立ち上がる!ってのがマンネリ化している。
サルマ・ハエックがデカデカとキービジュアルにいたのに、出番(しかも回想シーンのみ)がほとんどないまま退場したのはガッカリした人もいたんじゃないでしょうか。鎖でつながれた二人がビルから逃亡するシーケンスはゲームみたいで好きだったんだけど。
しかもウリだったジョニデともあんまり絡まないし。やっぱり前作で彼の物語は完結していたのでしょう。
今回助っ人コンビは最後まで生き延びますが、肝心のギターケースウェポンは火炎放射器にラジコンタイプの爆弾。
火炎放射器は思ったより射程が短いし、ラジコン爆弾はネタ切れ感が漂っており、明らかに前作より劣化してます。
それに前作は無双ムードからあっさりやられてたから印象に残ったのですが、本作では本当に取ってつけたような扱い。
「お約束のこれがないと絶対クレームが来るから何とかねじ込んだ」的な苦しさを感じてしまいました。

全体的にパッとしないマリアッチ側でしたが、逆に終盤で盲目ガンマン、もといガンマン座頭市と化すジョニデの姿はめっちゃ生き生きと描いてて楽しい。
何で目玉失った途端パワーアップしてんねん!
エンドロール後にも登場しており、ああ、本当はジョニデ主役にしたかったんだな……とひしひしと感じます。日本版の予告でも明らかにジョニデを主人公として描いていたしね……
(そう言えば近い時期にタランティーノの『キル・ビル』があったけど、前後編共に目玉抉りが描かれていた。二人ともそういう演出にハマってたのか?)
おかげで、彼がやたらこだわっていたプエルコ・ピビルを食べてみたくなりました。
が、監督のロドリゲス曰くかなり難易度の高い料理なので、以降の映画ではタコスなど簡単な料理を出すようにしたとのこと。
「難しすぎて一回しか作らない料理には、挑戦しなくていい。本当に好きな料理だけでいいんだ」
はい、おっしゃる通りです。
イルーナ

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