OASIS

キャラクター/孤独な人の肖像のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

20年代のオランダを舞台に、執行官の父と家政婦との間に生まれた少年が父への復讐を胸にのし上がって行く姿を描いた映画。

開始早々、弁護士となったヤコブと執行官の父との親子対決の場面から始まり、それにより父殺害の容疑をかけられたヤコブの事情聴取によって親子の歴史が紐解かれて行く作り。
ナイフを突きつけ、協力しようと握手を求める父を前に怒り狂って飛びかかるヤコブというオープニングが訳は分からないものの惹きつけるものがあった。

過失致死の疑いで取り調べを受けたヤコブ。
彼は、悪どい執行官ドレイブルハーブンと家政婦との一度限りの関係で生まれた
子だった。
だが父がヤコブを認知しなかった為引っ越した先でいじめに遭い、再び父の居る町に戻ってくる。
寡黙な母を尻目に百科辞典を読んで日々を過ごし、父と再会する。
ヤコブがある程度成長すると、事あるごとにその前には父が現れ壁となって立ちはだかる。
父が試練を与えているのか、それともヤコブが自ら父を求めているのか。
引きつけ合う両者の火花散るバトルが見ものであった。

ヤコブは同居人の共産主義者ヤンとタバコ屋を始めるが上手くいかず。
英語力が認められ会計事務所で働くが、
タバコ屋を始める際に金を借りた先が父の銀行であったと知らされる。
母親から新しいシャツを贈られるシーンに目頭が熱くなる。
新しい仕事を見つけても、その度に父の大きな権力に踏み潰されて道を閉ざされてしまう展開は「早くわしの居るステージまで上がって来い!」というようなスポ根感があり、美味しんぼの海原雄山と山岡士郎の対決を観ているようだった。

やっとの事で父と同じ土俵に立った事が出来たヤコブはいざ勝負と父の前に現れる。
そこで冒頭舞台の親子対決に戻るが、ここまで映画を観て来た事でナイフを突き付けた意味や、父が何故死んだのかという理由が分かる構成によりラストの苦味が増す。
父を越える事を目標としていながら、結局はいつも自分の一歩も二歩も先を行く父は永遠に越えられない壁としてこれからも目の前に聳え立つのか、そんな事を考える作品だった。
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