Otun

リップヴァンウィンクルの花嫁のOtunのレビュー・感想・評価

4.1
私。若かかりし頃は、結構な岩井信者でした(渋谷のBunkamura前にあった、今はなきミニシアターへ『四月物語』を観にいったりしたのが懐かしい)。

そして、ずいぶんと時は流れた。
久しぶりの岩井俊二作。

黒木華さん演じる主人公が、主体性がなく、常に廻りに翻弄される。
翻弄され続け、振り回され続け、騙されたり、なんだか転がるように生きていく。
長尺だけど、主人公の顛末が気になるし、うっすら乗っかったミステリーがちゃんとあるため、飽きない。


生きてく上で、その人にとっての『確かなもの』なんて、人それぞれやなぁ。
終盤。りりィさん演じる、あの人の母親に会いに行くシーンは圧巻だった。
りりィさんも度肝抜かれるほど素晴らしいが、
なんせ、人がぐるぐるぐるぐるぐるぐるしちゃって、もうなんだかで辿り着いちゃう、行動。
本当になんだかな。
悲しくて悲しくて、滑稽で、振りきられて、溢れちゃって、泣いちゃって、我を忘れちゃって、もう笑っちゃうよ。笑っちゃいますよね。
岩井俊二監督の人を見つめる視点の鋭さに舌を巻いた。
こんなシーン、観たことない。

そして、観終えれば、ふわっと、ゆるやかな風が頬を抜けるようなそんな読後感。
今や、41歳のおっさんになった私が、そんな恥ずかしい感想を記してしまう、そんな映画体験。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』。
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