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サムソンのnagashingのレビュー・感想・評価

サムソン(1961年製作の映画)
3.0
虐げられたユダヤ人の不能感を象徴するかのような抑圧された運命をたどる青年の物語に、どうして怪力の代名詞たる旧約聖書の英雄の名が冠されているのか最後まで解せなかった。怪力どころか主体性すらろくに発揮されず、状況に流されるまま身を処すうちに、同胞と運命をともにする機会を決定的に失ってしまう凡庸な男の悲劇であり、英雄譚にはほど遠い。ゲットーをひそかに抜けだしたユダヤ人がすれちがう他人の視線に怯えるという描写が、ユダヤ人を直感的に判別できない日本人の自分には絶望的に真に迫らないのも致命的な気がする。しかしこの映画、ほとんど倒されるためだけに出てくるドイツ兵より、主人公の身を案じるあまり彼を幽閉しようとする処女のほうがよっぽど怖いんですけど。
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