ノラネコの呑んで観るシネマ

ゾウを撫でるのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ゾウを撫でる(2013年製作の映画)
4.5
なるほど「アメリカの夜」+「ゴドーを待ちながら」という訳か。
ある映写技師の死から始まる物語は、一本の映画の撮影がクランクインするまでの映画に関わる様々な人を描く群像劇。
それぞれの登場人物のエピソードは、適度な距離を保ちながら不思議な世界観を構成する。
映画の死と再生のプロセスは、ドラマの背景に配された3.11を色濃く反映している。
劇中映画のシンボルとなる海岸の“樹”は、たぶん「ゴドーを待ちながら」で舞台に立つ一本の樹であるのと同時に、あの津波を生き延びた奇跡の一本松のメタファーだろう。
他にも、奇妙なタイトル含め暗喩が散りばめられていて、物語を読み解いてゆくミステリ的楽しみもある。
劇中映画の監督が語る54本の樹の小話は何だろうと調べてみると、これは日本にある原発の数だとか。
そう思って観るとこの物語は映画愛だけでなく、かなり奥深い。
インターネットで配信した連作を再構成し、映画館で公開というのは「裏切りの街」もそうだった。
しかしこの作品は、映画制作に関わる断片を組み合わせ、初めて全体像が見えるコンセプトが実に秀逸だ。
上映館は少ないが、映画好きには是非オススメしたい。
ブログ記事:
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