結局僕らはさ 何者になるのかな
何かと裸のシーンばかりがクローズアップされがちだが、三浦大輔監督の「愛の渦」は、コミュニティにおける人間の力関係をリアルに描いた作品だった。
とすれば平成生まれの作家、朝井リョウの直木賞受賞作品「何者」の映画化も最適な人材だといえるかもしれない。
「何者」で描かれるのはSNS時代の若者たちの人間模様である。
就活、恋愛といった背景を通じて、「自分は何者なのか」ということが繰り返し問われる。
こう書くと「アリスインワンダーランド」のような自分を探す映画にも思えるが、「何者」の場合は少し違う。
彼らはみな表面上では仲良く、仲間のことを考えている風だが、腹の底では相手に対して嫉妬やら侮蔑といった大小様々な思いを抱えている。
冷静分析を装うも内定という結果に結びつかない佐藤健や、意識高い系の典型パターンの二階堂ふみなどなかなか一筋縄ではいかない。
とはいえ、登場人物全員に感情移入できる余地を残しているところが素晴らしい点で、「桐島、部活やめるってよ」のように誰に自分を重ねるかで映画の感想は大きく異なってくると思う。
逆にいえば、この作品の登場人物の誰にもシンパシーを感じない人は楽しめないだろう。
《追記》
「君の名は。」「怒り」に続き今年3本目の川村元気の企画・プロデュース作品。前2作と同じく作品と音楽の親和性が非常に高い。