のん

ボーはおそれているののんのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.1
トラウマ療法ブラックコメディ

『ヘレディタリー』『ミッドサマー』と観客を地獄に堕とし続けるアリ・アスターの最新作は、前2作を超える監督の狂気の世界を3時間かけて味あわされる非常に迷惑な作品である。

神経症の中年ボーの奇妙すぎる旅路は現実なのか夢なのか曖昧なまま突き進む。4幕構成の各チャプターでしっかりとした気持ち悪さが、ある種の快感に昇華されているのはこれまでの作品に通ずる。

アリ・アスターは本作をコメディだと言っているが、あまりに不条理な出来事は喜劇というよりは「笑うしかない」という状況に観客を追い込んでいく。

過去の作品もそうだが、監督は自身のトラウマを、映画を通じて観客に拡散させることで克服しようとしているのではないかと私は思っている。

パーソナルな部分が色濃く出ていて、切実さがあるという意味では本作がいちばん好きかもしれない。
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