生きづらさに寄り添う
瀬尾まいこ氏によるロングセラー小説の映像化ということで、『そして、バトンは渡された』の映画がどうにもハマらなかった私としてはスタッフが全く異なるとはいえ不安しかなかった。
というわけで期待値をだいぶ下げての鑑賞だったが、生きづらさを抱える人たちに希望を与えてくれる素晴らしい作品だと思う。
PMS、パニック障害、家族の自死など周囲から理解されにくく、自分ではコントロールできない苦しみを丁寧に描いていく。
一方で、他者の苦しみに寄り添おうとする主人公ふたりの恋愛とは異なる関係性がとても心地よい。
上白石萌音と松村北斗は新海誠作品の声優にも抜擢されていたが、本作でも声の良さを遺憾なく発揮。
フィルム撮影による柔らかい質感の映像と、セラピーのような音楽も素晴らしい。出来ることならこのスタッフで『そして、バトンは渡された』を作り直してほしい。