ずどこんちょ

海よりもまだ深くのずどこんちょのレビュー・感想・評価

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
4.2
「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ。」という言葉を残したのは、喜劇王のチャップリンだ。
多分この映画は、「すっごく笑えました!」という人と「すっごく泣けた」という人が両立する映画だと思う。泣き笑いした人もいるかもしれない。

私は、是枝監督の作品の中で一番笑えたかもしれません。キャスティングも最高でした。自然派演技の匠たちが一斉に集まったみたい。
阿部寛主演ということもあって、あれを思い出しました。是枝監督が以前手がけていた連ドラの「ゴーイング マイホーム」。
ていうか、阿部寛の役もあの時と同じ「良多」という名前だし、良多の娘役だった蒔田彩珠が大きくなって再共演してますし……わざとでしょうか。

くすりと笑える良多と周囲の人たちとの会話の一方で、過去にとらわれる男の姿は切なくて哀しい。「男は過去動物、女は未来動物」と言いますが、まさにそのストーリーで、
良多の母・淑子を演じた樹木希林さんといえば、いつも明るくたくましいイメージがありますが、今回、息子夫婦の関係に涙を浮かべて「どうしてこうなっちゃったんだろうねぇ…」と悲しみます。このシーンが一番印象的でした。あれだけ今を生きる大切さを知っている淑子さんだったのに。

小林聡美さんが島尾敏雄を島田紳助と言い間違えるところとか、池松壮亮と阿部寛の会話とか結構笑わせてもらいました。