T太郎

太陽のめざめのT太郎のレビュー・感想・評価

太陽のめざめ(2015年製作の映画)
3.7
755
フランス映画だ。
ある非行少年の更生の物語である。

単純ではあるが、簡単な話ではない。
なかなか一筋縄ではいかない非行少年っぷりなのである。

主人公は16歳の少年マロニーちゃんだ。
彼は非常にキレやすく暴力的なのだ。
我慢する事を知らず、己の権利ばかりを主張する。
義務や責任を果たす事なく。

冒頭、マロニーちゃん6歳の時の事がプロローグとして描かれる。
この時、彼の母親が少年裁判所の判事に示す態度が、まさしく後のマロニーちゃんそのものである。

そして、後に登場する施設の少年たちも非常にマロニーちゃんと似ている。
すぐキレるし、権利ばかりを主張するのだ。

そんなマロニーちゃんに辛抱強く向き合うのが、前述の少年裁判所の女性判事と教育係の男性である。

マロニーちゃんは犯罪も平気で犯す。
暴力沙汰はもちろん、車両窃盗の常習犯なのだ。

その度にこの女性判事のお世話になっているという訳だ。
彼女は刑務所行きを求める検事の主張を退け、矯正施設への入所という裁定を下す。
彼が落ち込んでいる時は慰め励ます。
実に辛抱強く更生の機会を与え続けるのである。

このマロニーちゃん、かわいい一面もある。
判事の事が大好きなのだ。
なんせ、6歳の頃からの付き合いだ。

彼女が忘れていったスカーフをそっとポケットに忍ばせ、その感触や香りに浸りながら眠りにつく場面がある。
私が同じ事をすれば変態の所業だが、マロニーちゃんの心情を鑑みればここは感動的な場面だと言えよう。

もう一人、教育係のヤンも忘れてはいけない。
彼も実に辛抱強くマロニーちゃんと向き合う。

時にぶつかり合ったり、時に自信を失くして涙したりもするが、次第にマロニーちゃんの信頼を得ていくのだ。

実は彼もかつては非行少年だったらしい。
そんな彼を立ち直らせたのが、誰あろう判事なのだ。

彼はかつての自分とマロニーちゃんを重ね合わせていたのかもしれない。

しかし、そんないい人たちに恵まれながらもマロニーちゃんはなかなか更生しない。
すぐにキレて問題を起こすのである。

ヤンや判事に心を許したとしても、それが更生へと結び付かないのだ。

マロニーちゃんの将来が心配だ。
彼は果たして更生できるのだろうか?

もはや金八先生の出番を待つしかないのか!
「この馬鹿ちんが~」
を待つしかないのか!
馬鹿ちん待ちなのか!

そんな物語である。

いや、いい映画だった。
泣くまでには至らなかったが、良かった。
矯正施設の職員の人たちのプロフェッショナルぶりにも感心したし、実際こうであって欲しいと思った。

判事役はフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーブだ。
私は「シェルブールの雨傘」以来の大ファンである。
かなりお歳を召してはいるが、相変わらずお美しい。
その美貌に日焼けは大敵であろう。
私が彼女の日傘になれたらいいのにと思った次第である。

・・あまり上手くないな。
雨傘と日傘はちょっと遠いしな。
日焼けを酸性雨にした方が良かったかな。
消そうかな。
T太郎

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