第二次大戦のダンケルク撤退に材を採った、クリストファー・ノーラン、2017年公開作。
なんとなくの大作イメージと劇場鑑賞時に睡魔と戦い続けた経験からもっと長尺な印象だったが、なんとノーラン作品としてはかなり短い部類の106分だったのね。どうもノーラン×ハンス・ジマーの組み合わせは個人的にスヤスヤしがちなんだなぁ...
今回はそこまで眠くはならないまでもやっぱりなーんか長くは感じてしまって、全体的にややカタルシスを抑制している気がしないでもないので、これはもしやあえてなのかとも思えてきたり。
明確な主人公キャラを立てていないこともあって観客に惨めな戦争を追体験させるための長い体感なのかな、と。
ただその割に3つの時制が同時に進行するという構成はいかにもノーランっぽいギミカルな仕掛けで、本来は適度にスリリングなテンポ感とエンタメ性を付与するものとしか思えんのだがなぁ...
お馴染みCG断固拒否からのガチ戦闘機使用もそりゃリアルさは追求されてはいるものの、その結果少ない機体で延々やり合わざるを得ず、緊張感がスポイルされているのは果たして狙い通りなのか?
お得意の爆破はじめ名撮影監督、ホイテ・ヴァン・ホイテマの手腕が光る画的スペクタルに秀でたシーンは当然散見できるんだけど、あんまストーリーに有機的に絡んでいない印象。
全体的に手段が目的化してるというか撮りたい画ややりたい手法を優先した挙げ句、シンプルにわかりづらく、何が言いたいか伝わってこない...ってこのへんもノーランっぽいとか感じてしまう失礼な私。
考えたらトム・クルーズと似た方法論と言えなくもないのにここまで作風が違うのは、やはり頭脳派と肉体派の違いなのかな?
それでも比較的ノーランメソッドが希薄ながら、それだけにインパクトに欠ける、諸々半端さが支配的な1作ですかね。