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ハロルドが笑う その日までのCisaraghiのレビュー・感想・評価

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よく知らずに観たら初ノルウェー映画だった。

ノルウェーって資源に恵まれた豊かな国で平均所得も日本なんかよりずっと高くて移民にも手厚くて、みんな幸せに満ち足りて暮らしている国、みたいなイメージが漠然とあったけれど、資本主義は弱肉強食、ノルウェーでも儲ける人がいれば喰われて逆境に陥る人もいる訳で、ハロルドもそんな資本主義の熾烈で容赦ない闘いに敗れた一人。偶然知り合ったスウェーデンの16歳の女の子エバも決して恵まれてはなく幸せでもなく、いくら国が豊かでも全員が全員幸せだなんてそんな天国のような国は世界のどこにも存在しないよなと、バカみたいだけどそんな当たり前のことを思った。
 不遇な人たちの話とはいえ、タッチは比較的明るくユーモラス、ヘビメタっぽい音楽も使われていて、決してウェットではない。氷の穴に落ちた後の場面は大いに笑った。

エバ役の子がジャニス・ジョプリン似、ハロルドに男か女か?と問われたり、髭をつけるとパパそっくりというのも頷ける、寂しさを醸しているクールな子で、見た目全然似てないけどどことなくリバー・フェニックスみたいだった。ハロルドについた嘘の温もりが哀しかったなぁ…。

ハロルドは、ノルウェーの北海寄りベルゲン市オサネで家具店を営んでいた設定。だけど物語の大部分はスウェーデン南部のエルムフルト近辺が舞台だと思われる。エルムフルトはIKEA1号店が建てられた所で現在も本部があり、IKEAの博物館もあるらしい。季節は冬、北欧の冬は寒くて暗そうという先入観があったが、一面に白い雪が積もっているので意外に明るい。白樺の林、凍った白い湖、白い道路に黒い針葉樹の森。よく雪が降る。IKEAの家具も白い。

オサネからオスロまでは直線でも300㎞、オスロからエルムフルトまでは同じく400㎞以上あって、サーブはかなり酷使されていたようだ。背景に山が映り込みがちなノルウェーは、何となく日本と景色が似ている気がした。スカンジナビア山脈が陸地のほとんどを占めるノルウェーに平地はほとんどないらしい。

元はFrode Gryttenの短編小説。2018年に他界したIKEAの創業者カンプラート氏がまだ存命中に作られた映画で、よくこれを作ることを了承したものだと思うが、若い頃ナチスに傾倒していたことを弁明するいい機会だと考えたのだろうか?おそらく北欧ではスティーブ・ジョブズ並みに超有名人、この映画もIKEAとカンプラート氏が実名で登場するというだけでかなり話題になったのでは。この映画を観る限り、カンプラート氏に嫌な印象は持たなかったし、IKEAに親近感を持ったので宣伝にもなったかも。
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