漱石枕流

夏美のホタルの漱石枕流のレビュー・感想・評価

夏美のホタル(2015年製作の映画)
3.7
小学生の頃、夏休みにはよく母の実家に遊びに連れて行ってもらっていた。一応、そこは市なのだが、はたして隣家がどこにあるのかわからないほど長閑。今でもコンビニがないというほどの田舎なのだ。

しかし楽しみなのは夜だった。近くの川原へ出かけると、蛍に出会えたのだ。今考えるとびっくりするくらいたくさんいて、それはまさに〝蛍の洪水〟だった——

この映画を観て、そんなことを思い出した。残念ながら劇中に出てくる蛍はすべてCGだろうが、田舎の空気は感じ取ることができた。東京から来た学生ふたりが現地の人たちと触れ合う場面——ちょっと感じの悪い人がいたり、気まずい場面があったりしながらも心地よい。

ただ違和感を覚えたのは、離婚事情だろうか。別れた理由が明かされるが、そんな理由で連絡をしぶるのか? と解せなかった。あと、世話になるその男性が「地蔵さん」とよばれていたり仏師が出てきたりするので、何か仏教的な要素があるのかと期待していたが、特にそういうものはなかった。

ただ、仏師のセリフで「才能とは覚悟のことだ」というセリフはとても良かった。米映画の『ファウンダー』にも「才能とは根気のこと」と言う言葉が出てきたが、よく似ている。これは老子の〝大器免成〟(大きな器は完成しない)に通じるものがあると思う。

2023/04/14 WATCHA

P.S. 意外に意味があったのは、冒頭のドイツ語Tシャツだろうか。作品の内容に合わせたものを選んでいたらしいことに後で気づいた。
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