漱石枕流

スターリングラードの漱石枕流のレビュー・感想・評価

スターリングラード(2000年製作の映画)
3.8
最近になってようやく『同志少女よ、敵を撃て』を読んだ。今になった理由は図書館で予約待ちをしていたから。「忙しいこの時期に!」と思ったが、かといって列に並び直す気も起きない。頑張って返却期限までに読み終えた。

独ソ戦——ロシアでは〝大祖国戦争〟と呼ばれているそれは、勝つには勝ったが敗戦国である日本の9倍もの戦死者(諸説あり)を出し、第二次世界大戦の戦場の中で最も過酷な戦争だったという。

そしてスターリングラードは、いわば太平洋戦争におけるミッドウェイ海戦と言うべき転換点であるが、それだけに一番の熾烈さを極めた戦場だというから、まさにあの時代における最大の激戦地だったということになる。

(余談だが、スタジオジブリの鈴木Pによると「宮崎駿監督は独ソ戦のエキスパート」で「そんじょそこらの戦争評論家でも太刀打ちできない」ほど詳しいのだそうだ。ちなみにご本人も「『ナウシカ』は独ソ戦がモデル」と発言)

私が知っている独ソ戦についての知識は以上で全部なのだが、小説のみならずウクライナ戦争を経たことでも、俄然興味が湧いた。なので、結構楽しみにして鑑賞した。

まず、映像自体はたいへん力作だと思う。さすがに20年前の作品なので、CGの部分はややチープに感じられるが、瓦礫と化した街の描写はよくできていると思う。じつはこれだけでもかなり満足だった。

そして戦闘シーン。丸腰しで敵に突撃するとか、ちょっとでも逃げの姿勢を見せただけで上官に背後から撃たれるとか、あまりに酷い! もしこれが事実なら、戦死者が多かった理由は納得できるが、実際はどうなのだろうか。

メインストーリーは狙撃手対決が軸になっているが、ヒロインも狙撃手でしかもドイツ語ができるという設定が『同志少女よ〜』を思い出させる。ひょっとしたら、あの小説の作者は本作からヒントを得たのかもしれない。

ただ人間ドラマとしては今ひとつだと感じられた。20年前の作品であることを考慮しても、古臭いんじゃないかなと思う。そこが残念なのだけど、それでも私の好きなジャン=ジャック・アノーの演出に救われた。

トータルでは最後まで興味の尽きない、見応えのある映画だと思った。

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