今年のアカデミー賞にはノミネートもされなかったけど、ホアキン・フェニックスはハマり役だと思う。すくなくともこの存在感が出せる俳優はそうはいない。予告編でそう感じたし、本編鑑賞後もその感想は変わらない。
王政が崩壊して共和制が成立した後に出現した〝皇帝〟の盛衰を描く。波瀾万丈な人生はいくつもあるけど、彼の場合は時代に下駄を預けていたわけではなくて自分自身が主体となって動いている。そこがポイントだと思う。
料理に例えるとフルコースのような中身の濃い人生だ。これは彼だけのものだが、別にうらやましいと思わないのは私だけではないと思う。強い野心を持っていたのに無駄に費やされた時間が多く、最後は苦々しい。
でも、どれほどの地位と力を持っていても、結果を出せなければ島流し——という顛末は条理。今の時代、たとえばプーチンなんかは戦争を始めても最前線で指揮したりしないし、もし負けたしても責任は取らないのではないだろうか。
長い半生をまとめているせいか、全体的に若干ダイジェストぽい(前半は特に)。そのせいか上映時間が長いわりにはずっしりとした見応え感がなく、そこはすこし物足りなく感じた。
[ドイツ語音声+日本語字幕]2024/03/07 Apple TV+