そのじつ

スイス・アーミー・マンのそのじつのレビュー・感想・評価

スイス・アーミー・マン(2016年製作の映画)
3.6
無人島で自殺しようとしている青年の目の前に、死体が流れ着く。
死体は青年を無人島から連れ出し、彼ら(?)は故郷をめざし歩き出す。

おもしろかった!
いささかリリカルで内向的な青年のひとり語りの趣があるが、その閉じて優しい世界と、ラストの視界がいきなりひらけた感じになる対比にハッとする。
主演のダノさん良かったが、死体のラドクリフはマジですごいね。夢中になったよ。


以下ネタバレですが

父親にも片思いの女性にも遠く、孤独を募らせていた青年はまさに無人島でひとり死にかけの状態だった。SNS(海に流したSOS)に「ひとりで死にたくない」と発信しても反応はない。
そんな彼のかたく閉じた心をひらいていく死体。
死体との対話は自身と向きあう過程となり、火種のまま仕舞い込まれていた望みに火をつけ外界へと送り出す。

俺ってキモいよ。
誰だってキモいとこのひとつやふたつはあるさ。
・・的な会話があるが、醜さ・キモさに敏感ですぐ傷ついたり傷つけたりするところに若者らしさを感じる。ウフッとなる。馬鹿らしいと思う。でも可哀想になる。
中年はそんな風に感じた。若者はどう思うのだろうか。

たくさん名シーンがあるが、青年が熊に齧られ引きずられながら死体と話すシーンが凄く好き!会話の内容じゃないの。シチュエーションが。
こういうの、自分がみんなに見せていない場所をピタっと探りあてられたような驚きで、すごい快感。

「う●こネタでワクワクする自分はコロコロコミック派だった」という意のツイートを今朝見て共感していたが、まさにこの映画はコロコロ派にツボるやつかもしれない。
『ケシカスくん』を読んで小学生の息子といっしょにはしゃいでいたバカ母は私です。
そのじつ

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