mochi

街をぶっ飛ばせのmochiのレビュー・感想・評価

街をぶっ飛ばせ(1968年製作の映画)
4.7
シャンタル・アケルマンは「私、あなた、彼、彼女」「一晩中」に続き3作品目の鑑賞。本作が一番楽しめたし、なんならアケルマン映画以外を含めても、かなり上位に来る映画。「街をぶっとばせ」がタイトルだが、ぶっ飛ばすのは自己である。主人公の行動は、一貫して自己からの逸脱と解放への欲望に裏打ちされるが、それが不可能であることを彼女は知る。汚くパスタを食べる行為、自らを汚すという行為、猫の真似をするという行為、マヨネーズで化粧するという行為は、いずれも自己を汚すことで、自己から逸脱しようという動機を持つが、鏡の存在により、彼女は自己から逃れられないことを知る。自己から逃れるあり方は、自己の喪失である。もちろん、これは私にとっての自己の喪失であり、そうでない人にとっては、自己は自己のままである(翌日の新聞には、「×××(主人公の名前)が自殺」とのるだろう!)それでも自己にとってはそれは意味のあることである。
こうした考察がどうでも良くなる程、本当に画と雰囲気がカッコ良すぎる!鼻歌も最高。こういうアイデアが1968年に実現されていたというのは恐ろしくさえある。本当に街をぶっ飛ばしたくなった。おそらく2023年ラスト映画だが、良い作品で締めくくれた。
mochi

mochi