Ayax

リトル・マーメイドのAyaxのレビュー・感想・評価

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)
3.8
大事なことなので一番最初に書いておこう。これは、今映画館で観る価値がある映画。家のテレビや飛行機で観ると価値が激減するタイプの作品。一生観ないなら全然それで良いけど、配信されたら観ようと思ってるならそれはもったいない。最寄りのなるべく良い映画館に行ってほしい。映画館に行け=大傑作と言いたいわけではなく、音と映像が映画館向きという話。
キャスト発表時から公開まで、ずっと話題になってる主人公の人種問題。多様性に配慮して意図的に選ばれたのかと思ったけど、実際はオーディションをやって演技力と歌で合格ラインをクリアしてたのが彼女一人だったのでということらしい(本当のところはわからない)。オーディション時に人種の制限をしてない時点で良いことだなと思う。「リトル・マーメイド」ってカリブ海の辺りが舞台っぽいから、白人ではない人魚がいてもいいんじゃないかという考え方は全然あり。
興行的には、米国内ではまずまずのヒットで、海外ではコケてるらしい(おそらく赤字で着地と言われている)。アニメ版のアリエルに思い入れがある人が、キャスト発表時点で、私が見たいアリエルじゃないと思ってしまうのも致し方なしかなとは思った。肌の色なんて何だっていいよ!変えていこう!という人が増えてるのは確かだけど、その一方で、白人のプリンセスの話が見たいのよ!という人も一定数いるはず。
実際に観てどうかと言うと、ほぼ気にならない。想像より本当に全然違和感なし。一瞬で全然ありと思えたほど。信じて!主役のハリー・ベイリーさんがちょっとファニーフェイスなんだけど、それもまた実写版アリエルの魅力の一つになってた。そして何よりすごいのが歌と歌声。こんなこの世のものと思えないほど美しく神秘的な声の持ち主が存在するのかという衝撃。素晴らしかった。私はゼンデイヤさんのファンで、2018年にゼンデイヤが実写版アリエルの候補というニュースが出て、良いじゃん!って思ったんだけど、ゼンデイヤだったら元歌手とはいえこんな神秘的な声は出せないんじゃないかなと思った。なので、ハリー・ベイリーさんで私は納得。彼女が主人公で観る気が失せたという人がいたら一度観て判断してほしい。
音楽は新曲が足されていて、全部アラン・メンケンが作っていてレジェンド降臨なのと、さらにリン=マニュエル・ミランダ(ブロードウェイのミュージカルの作曲の評価がとても高く、最近は映画の仕事も大変注目されている時の人。ディズニー仕事だとモアナやミラベルが有名)も一緒に作ったらしく、豪華すぎる。もともとある"Under The Sea"以外にもカリビアンミュージックっぽい曲が増えていて、ハリー・ベイリー版アリエルを後押しする形になったんじゃないかな。ただエリックが海に向かって一人で歌ってるシーンは滑稽だった。
海のシーンも超絶美麗。海中のシーンは明るかったり暗かったりカラフルだったり怖かったり、あらゆる海の表情を余すところなく表現していた。それがすべて素敵で観ていて飽きない。2023年に実写化する意味をめちゃめちゃ感じた。ただ、海の中が美しすぎて、それに比べると地上の良さがあまり出てなかったような。ラグーンのシーンとかもっときれいに幻想的だったらどっちも良いよねという気持ちになれて良かったかも。
あと、多くの人が絶賛してるアースラ(メリッサ・マッカーシー)。彼女のシーンは確かに全部良かった。演技もCGも素晴らしくて、たこ✕魔女表現最高だったと思う。
カリブ海あたりが舞台と言いつつ、地上のシーンはイタリアのサルディーニャ島で撮影したっぽい。やっぱりあの辺の海素敵なんだな。行ってみたい。
アリエルの歌もフルオーケストラのメインテーマ曲("Part of Your World")も素晴らしいし、海表現が圧巻だし、今映画館で観る価値がある映画。私はIMAXで鑑賞してとっても良かった。海の中にいるような気分を味わえて楽しい。
コロナ禍でディズニー映画を上映する映画館が、作品によるかもだけどやけに少ない時があって(上映〜配信の間隔を一定期間空けるのが映画業界の習わしなのに、ディズニーが上映と同時に配信しようとしたとか、そういういざこざ)、またこういう作品を望ましい環境で観られるようになって良かったなとしみじみ。

〈以下、ネタバレあり〉
アニメ版から変えてるところがいろいろあったようで、アースラにとどめを刺すのがエリックからアリエルに変わったのめちゃ良いじゃんと思った。足がなくて立てないのに立ち上がってエリックを救おうとするの良い改変だと思った。
Ayax

Ayax