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ブラック・スワンのwisteriaのレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
4.1
先日の『Vフォー・ヴェンデッタ』からさらにナタリー・ポートマンを見よう!ということでアカデミー主演女優賞受賞のこちらをDisney+で。有名作ながら初鑑賞。

バレエ『白鳥の湖』の主役に抜擢されたニナ(ナタリー・ポートマン)。純粋の象徴である白鳥と官能性のそれの黒鳥の二役を演じる大役。公演の日が近づくにつれて、のしかかるプレッシャーからライバル・ステージママ・振付師などとの関係性がゆがみはじめる……

どの瞬間を切り取っても血が噴き出そうなほど一ショット一ショットに緊張感が漲っていて、仕上がり切ったナタリー・ポートマンの鬼気迫る身体表現から目が離せなくなる。映画としてとても迫力があるのは確か。サイコスリラーとしての手並みが初期のポランスキー監督とかアニメの今敏監督『パーフェクト・ブルー』に近い味わいがある。男女反転させたら後年の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』も想起させるか。

ただこれは観ていて非常に疲れるというか辛くなりますね。。セクハラ・パワハラ・イジメ・毒親・薬物とエグ味の強いテーマのてんこ盛り。究極の美という崇高なお題目を掲げる、しかし逃げ場のない閉鎖的な世界での闇。バレエに限らず、風通しの悪い、絶対的な権力が特定の人物に集中する不健康な人間関係では同様のことが起こりうる。ここほどではないにしろ私のかつていたブラック職場でも起こっていた。。映画好きとしてあまり聞きたくないことだけど最近(特に日本の)映画製作の現場でもこの手のハラスメントの横行を仄聞するから連想してしまうところはある。。

108分と意外とコンパクトな尺に収まっており、ナタリー・ポートマンとダーレン・アロノフスキー監督の美と実力を堪能できる佳品だけど、そこらのホラーより怖ろしく心抉られる一本でもありました。。
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