苦い青春映画の傑作。1970年代なら藤田敏八監督の『八月の濡れた砂』へと繋がる部類の嚆矢だ。
わりきった「現代」カップル(当時の)に見えて、変わらない焦燥や不安も描き、その行方もリアルに描く。
学生運動に限界を感じた大島渚監督の、28歳という心情もリアルに反映されている。
泳いでいた貯木場で、恋人の女が揚がろうとするのを何度も突き落とすシーンや、病院でのりんごを齧る長回し、いろいろなシーンに「心象風景」や感情の比喩があり、印象強い。
ヌーヴェルバーグの影響とはいえ、新鮮で鮮烈なこの映画を撮った大島渚の才能もすばらしい。
学生時代に三百人劇場で、「黒澤明の全貌」に続き、「大島渚の全貌」に通った。全貌を通してあらためて監督の凄さがわかり、1960年に撮られた、若き監督のこの作品の位置づけもよくわかった。