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テイキング・オブ・デボラ・ローガンの消費者のレビュー・感想・評価

3.7
・ジャンル
モキュメンタリーホラー/POV/ファウンドフッテージ/オカルト

・あらすじ
アルツハイマーに関する検証ドキュメンタリーの撮影の為、バージニア州エグズマに娘サラの介護を受け暮らす患者の老女デボラ宅を訪ねた医大生ミアと撮影班の一行
デボラは少々気難しい所はあるものの症状が初期段階である事もあり意思疎通にもさほど問題は見られなかった
しかし時が経つ毎に病状は急激に悪化
夢遊病や自傷、錯乱などが度々発生し遂には体や人格にまで変化が現れていく
そのどれもがアルツハイマーの症状には当てはまらず、デボラの奇行も日増しに激しさを増していく
やがてそれは医学や物理法則では説明の付かない物へと変化していき…

・感想
POV/ファウンドフッテージ/モキュメンタリー強化月間DAY-5
アルツハイマーと何者かの憑依という絶妙な組み合わせの題材に惹かれ以前から気になっており今回やっと鑑賞

POVのモキュメンタリー作品らしい生々しさ、アルツハイマーと憑依による暴走という他者の理解を得づらい物の重ね方、病魔や憑依と必死に戦う老女デボラの悲哀、介護と暴走を止める事の辛さから精神的に弱っていく娘サラの姿
そういったストーリー性自体はそれなりに魅力的だった
後半から明らかになっていくデボラの過去に隠された秘密と現状の繋がりというのも親子愛を感じさせ悪くない
だからこそホラーとしては若干弱さを感じてしまった点が惜しかった

基本的に本作における恐怖演出の大半はアメリカ作品らしくジャンプスケアが占めている
それ自体は覚悟していたし単なる憑依だけでなく発作的な症状にも見える様な中盤までの描かれ方は生々しい厭さがあって巧かったと思う
ただそれにしても1つ1つが若干弱かったというのが全体を通しての印象
終盤に近づくにつれてデボラの見た目や行動の異常性はしっかり増していって怪異としての迫力も伴っていくとはいえいかんせんそこに辿り着くまでが長く、中弛みが否めない

また1人だけ途中退場者が出るのも一般的なホラーならその人物に災厄が降り掛かる所をただ退場しただけだった点
娘サラの飲み込みが早過ぎたり母を助ける上で逞し過ぎた点
ハリスが何故ああまで取材班を目の敵にしていたのかが描写不足だった点など引っかかる部分も少なくなかった
POV/ファウンドフッテージ/モキュメンタリーはエンタメに振っていない場合、生々しさが肝だと思うのでそこらへんは作り込んで欲しかった所

そして単純にホラー作品として観た上でも台詞での説明がやや多く全容が分かり過ぎてしまうのも逆効果に思えた
分からない部分を多少残した方がちゃんと怖くなったんじゃないかと…
塩梅が難しいのは分かるけどそこも惜しかった部分

あとは主要人物達への被害が少なかったのも微妙
被害があってこそ脅威と向き合う展開により説得力を生み出せるはずなのでもっと滅茶苦茶やっても良かったはず
そうすれば恐怖演出も強烈に出来ただろうし

といった感じで悪くない作品ではあるけど不満点も多いいつものアメリカホラーというのが総合的な評価かな…
でも終盤の完全に異形化していたデボラの描写やラストで示唆されるオチとかはまぁまぁ好き
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