タキ

海は燃えている イタリア最南端の小さな島のタキのレビュー・感想・評価

4.5
アフリカや中東からの難民の流入口となっているイタリア最南端の島ランペドゥーザ島の島民たちの日常生活と命懸けで地中海を渡る難民たちの姿を描いたドキュメンタリー映画。
12歳の少年の日常と次々とすし詰めの劣悪な環境下の船で渡ってくる難民の描写は交互に淡々と映し出され決して交わることはない。元気いっぱい毎日遊んでいた少年が実は弱視で片目がほとんど見えていないことがわかるのだがそれがそのままこの凄惨な現実を知らなかった私たちへの問いかけのようにも思える。少年の弱視の治療をする医者は一方で難民の治療を続けており両者を緩やかに繋ぎこの現実を言葉として語る唯一の人物。アフリカから渡ってきた青年の歌、水を頭からかぶり慟哭する女性、血の涙を流し呆然と座る青年、横たわる死体、傍らに佇む難民受け入れの職員たち、これが特別ではないこの島にとっての日常であると映像は伝える。少年の弱視はいずれよくなりその時に彼の開かれた両目には何が見えるのだろう。言葉ではない静謐な映像の力に圧倒される作品。
ただ移民問題については日本人にはピンとこないところもあり事前の知識が必要。
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