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透明人間のyumeayuのレビュー・感想・評価

透明人間(2019年製作の映画)
4.0
『サプライズ』

タイトルがド直球すぎて、初めて予告編を見たときは「いまさら透明人間⁉︎」とビックリしましたが、なかなか評判が良いということで鑑賞。
テーマは古典的ですが、しっかりと現代版にアップデートされていて、話題になるのも納得でした。いまや透明人間はグルグルの包帯(古すぎ⁉︎)ではなくて、光学迷彩スーツなんですね。

監督は『SAW』や『インシディアス』を手がけたリー・ワネル。ホラー映画ならお手の物といったところで、観客を怖がらせる緊張感のある演出はさすがでした。
特に"見えない"はずの透明人間が、すぐそこに存在するかのように見せる演出は見事。スッと何もないところにカメラがパンするだけでもめっちゃ怖い。こちら側の想像力をひたすら掻き立ててきます。

そして、今作ですごく面白いなと思ったのはエリザベス・モス演じる主人公セシリアのキャラクター。
死んだはずの夫の影に怯え、周りに夫の存在を訴えても信じてもらえず、精神が衰弱してしまい、遂には狂ってしまったと思われてしまうセシリア。
この「実は全て主人公の妄想なのでは?」と思わせる演出も今作の素晴らしいところなのですが、感心したのはこの後の展開。

やがて、身も心も追い詰められたセシリアは、いつまでも逃げたり怯えたままではダメだと、いよいよ透明人間に立ち向かう決心をします。
まぁ、ここまでならホラーやサスペンス映画に割とありがちな主人公の描かれ方なのですが、面白いのは反撃を試みるにつれて、次第に彼女自体が狂気を帯びてくるところ。
常軌を逸した束縛をするソシオパス気質なDV夫に対して、主人公が反撃するのであれば大抵の場合、主人公の行動に共感できるはずなのに、どこかスッキリしない。
それどころか最後の展開はDV夫以上に怖かったし、思わずゾッとしてしまいました。

それもこれも全てはエリザベス・モスの演技力によるもの。相手が透明人間なので、実際は一人芝居みたいなものですからね。彼女の演技に説得力がなければすごく滑稽なものに見えてしまうはず。物語の初めと終わりでは主人公の印象が全く違って見えます。

あと、最後に申し添えておきますが、『透明人間』というタイトルで世の中の男子はついついあんな事やこんな事を想像してしまいますが、残念ながら?今作にはそのようなムフフなシーンはございませんので、悪しからず。
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