ToshiyaYokota

透明人間のToshiyaYokotaのネタバレレビュー・内容・結末

透明人間(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

〇何度も映画化されてきた「透明人間」の2020年リー・ワネル監督版。この映画内では、透明人間であることが一応科学的に説明できるようにはなっている。あくまでSFだが。

〇全体的にホラーとしても、サスペンスとしても想像の範囲を出ない、意外性があまりない作品であった。

〇中盤までは割かし良かった。特にペンキのシーンまでは、主人公の妄想なのでは、自作自演なのではと考えられる余地があった。タイトルの「透明人間」を囮にしたトリックなのでは、タイトルは比喩なのではと思わせた。すでに亡くなった人物にまだ悩まされるという部分は掘り下げてほしかった。

〇最後にどんでん返しがあるが、主人公が家に戻ってあのスーツを作った時点では少なくともラストは想定できない。というか、あそこでスーツを着て、透明人間vs透明人間になるのかと思ったのに。冒頭に荷物を出したクローゼットの隠し扉に隠すだけ。

〇思い返すと脚本の粗もかなりある。まず、冒頭で夫が自殺したというのに家には帰らないし、葬儀とか身元確認とかいろいろないの。ラストも音声、映像的に自殺であることは間違いなくても、救急車を呼んだ妻が現場から立ち去るのはあまりにも不自然。

〇それから透明人間の設定がいい加減。例えば、上記した主人公がスーツを作って隠すシーン。なぜ隠した後にクローゼットから出るところだけが緊張感があるのか。あのスーツを作るところ、隠すところに緊張感がなければ。他にも、部屋の中であれば頑張れば捕まえられるのではと思ってしまう。透明人間は音も発しないような存在だったが、歩いたりドアを開けたりすれば音はする。あくまで透明なだけであって物体としては存在している。結局、主人公側からしか描いていないから、都合の良い透明人間像になってしまう。それこそ映画内では説明できる透明人間ならそこは徹底した作りにすべきだった。

〇主人公も透明人間がいるのではないかと察して努力するシーンが全然ない。見られているのでは、バレているのではと感じる場面がなく、都合の良い場面だけ見られている設定にするのもどうかと。

〇そして、音楽がうるさい。ここってところで音楽がでかでかとかけられ、そうでないところで静かになる。これも意外性がなくなった要因の一つだろう。

〇まぁ、最後に主人公が勝つのはこの映画だからという訳でなく想像できる範囲ではある。エンターテインメントとしてそこそこの面白さはあるものの、あまりにも出来がスマートすぎる。もっとどこか歪なところがないとこの手の映画の中で印象には残らない。
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