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透明人間のsomaddesignのレビュー・感想・評価

透明人間(2019年製作の映画)
5.0
トライポフォビア(集合体恐怖症≒蓮コラ恐怖症)ならより怖い

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夫エイドリアンに束縛される生活を送るセシリア。ある夜、計画的に脱出を図る。残されたエイドリアンは手首を切って自殺し、莫大な財産の一部を彼女に残すが、セシリアは彼の死を疑っていた。やがて彼女の周囲で不可解な出来事が次々と起こる。いないはずのエイドリアンの影に怯えるセシリア。周囲からは心神喪失を疑われ孤立してしまう……。

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やー、面白かった!
覚悟してたより、ホラー味よりスリラー/サスペンス味が強くて助かった。痛いのグロいの無理っす。


マーベル、DCに続いて三匹目のユニバースを狙って立ち上がったユニバーサル・ピクチャーズの怪物映画シリーズ「ダーク・ユニバース」シリーズ。ミイラ・ドラキュラ・フランケンシュタイン・透明人間・狼男etc..といったユニバーサル映画の歴史を彩る名モンスター達夢の共演。満を持して2017年にトム・クルーズを担いで「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」が公開されるも、興行も評判もズッコケてしまう。結局ユニバース構想はやめて、単発作品として作ってく方向にズバッと方針転換。そりゃそうだろうという気持ちはさておき、一時はジョニー・デップが透明人間を演じる予定もあったので、それはそれで見てみたかった。

まずもって過去何度も映画化された「透明人間」と大きく違って、透明人間が主人公じゃない! 見えない恐怖に脅かされ、逃げ惑う姿をネバっこく描いたのが新鮮! アイデアの勝利!

オープニングの脱出劇の見事さ。映画の冒頭から掴まれた。
夜更けに波打つ断崖の上に立つ豪邸は古城の現代版。マッドサイエンティストの根城として度々威容を見せつけ、同衾するセシリアに巻きつくエイドリアンの腕が束縛を暗示する。家中の監視カメラやハイテク設備で邸内でなんらかの研究開発をしてることがわかるし、マッドサイエンティストの執着心も垣間見える。だいたい愛犬にあんな名前をつけるって、神を従える尊大な存在として自認してるエイドリアンのヤバさ。

その後の避難生活での小道具のフリと回収も素晴らしいし、特徴的なカメラワークと画面構成が超うまい。特に何度も出てくるカメラのパン。わざわざ特に何もない空間にカメラを向けることで、何かがコチラを見ているような気がしてくる。特撮とかCGいらなくてラクな割にすごく効果的。前半はこのセシリアの心理的崩壊を中心に、心霊ホラーの見せ方でネチっこく追い詰めてく。


(以下ややネタバレあり)
語り口の巧妙さもすごいし、ある地点を境に物語が反転するのもすごい。エリザベス・モスの熱演で、追い詰められて神経衰弱した弱々しい姿から決意に満ちた力強い姿に変わる。この展開、サンフランシスコが舞台だし、ブロンドを強要される妻ということもあって、多分ヒッチコックの「めまい」オマージュ。
他にも序盤の心霊ホラー描写はJホラーの影響を感じるし、屋●裏を覗くシーンは「呪怨」にあったような。終盤のアレは「ゴーン・ガール」を連想した人も多いはず。そういえば宣伝用ポスターのヴィジュアルもどことなくJホラーっぽい。

透明になるギミックも現代的解釈としていいし、ハリウッド版攻殻にガッカリした人もこのギミックなら楽しめるハズ。
匿名の姿の見えない相手から、容赦のない暴力が振るわれ、被害者以外には傷を共感されにくくどこまでも心身喪失してしまう姿はSNS炎上の連鎖を連想して、テーマ的にも今日的だと思った。

不可解なのは、予告編にあったシャワーシーンのガラスに手形が浮かぶトコ。本編にはなかったような?


38本目
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