マヒロ

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルのマヒロのレビュー・感想・評価

2.0
アメリカが月面着陸を成功させた1969年のその日、インディアナ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)は考古学教授の仕事を定年退職する。科学に目を向ける若者たちは考古学には興味がなく、寂しく職場を後にするインディだったが、彼の前にかつての友人バジルの娘であるヘレナ(フィービー・ウォーラー・ブリッジ)が現れ、バジルとインディがかつて手に入れた「アンティキティラのダイヤル」についての調査を依頼される……というお話。

『クリスタルスカルの王国』から十数年ぶりの新作。当時もハリソン・フォードはだいぶお爺だなと思ったが、今作ではより一層老けており、危険なアクションシーンを見ると心配が勝ってしまった。とは言え、同じく老境に差し掛かったヒーローの話である秀作『ローガン』を生み出したマンゴールド監督なので結構期待していたんだけど、なんとも言えない残念な作品になってしまっていた。
こういうフランチャイズものの続編を作るにあたって、何年も間が空いていたものをわざわざ引っ張り出して作るからにはそれなりの意図が見えてこないと納得いかないんだけど、今作にはそれは全く見えず、ただハリソン・フォードが老体に鞭打って働かされてるだけって感じで何のポリシーも感じられない。同じルーカスフィルムの『スター・ウォーズ』プリクエル三部作と全く同じ感想で、創造主のルーカスの手から離れると全くダメなことを再認識。
科学の発展が目覚ましく、時代遅れになった男としてインディを描くのは面白いし理にかなっているけど、それが作中に活かされているかと言われるとそんな事もなく、内容は何の変哲もないアドベンチャー映画という感じ。そもそも冒頭の列車上での攻防や石造りの街を車で駆けずり回る場面とか、他の映画で見たような手垢のついたアクションシーンが多く、古代文明の遺跡とかそういうインディ・ジョーンズらしいところが出てこないので“続編を見た”という気持ちすら起きなかった。
ヒロインとなるヘレナも、やたらとインディを騙してお宝や金をむしり取ろうとする嫌な奴で、知らぬ間に改心するが最後まで全然好きになれないキャラクターだった。近い時期に公開された『ミッションインポッシブル デッドレコニング』でヘイリー・アトウェルが演じてたキャラも似たように主人公を邪魔するような役割だったが、あちらは寝返るまでの過程を結構しっかり描いており(だから二部作になってしまったのかもだが)、そこと比較しても人物描写が浅いと言わざるを得ない。マッツ・ミケルセンが演じる悪役も、演者の魅力を全く引き出せていないつまらないキャラクターで、シリーズ恒例の悪役がとんでもないこと死に方をするという場面も無く影が薄いままで非常に勿体ない。序盤だけ出てくるバジルは演じるトビー・ジョーンズのちょこまか動くコメディリリーフっぷりが良かったし、カレン・アレンは昔のイメージそのままの可愛いお婆さんになっててその登場シーンはグッときたが、良かったキャラクターはこれくらいだったかな。前作で息子として出てきたシャイア・ラブーフは、本人の素行不良もあって使いづらいからか、無慈悲に死んだ扱いにされててそのテキトーさに笑ってしまった。

低評価を受けがちな『クリスタルスカルの王国』だが、インディジョーンズシリーズの続編としてはしっかり形を成したものになっていたので、今作のような類似コピー品みたいな虚無作品とは雲泥の差があると思う。ディズニーで言うとマーベルやアニメ部門が作品の乱発によりクオリティが下がったと言われているが、今作も同じように売れそうなフランチャイズを適当に引っ張り出してきて作られた被害者の一つだと思う。

(2023.159)
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